| 研究課題/領域番号 |
19K13731
|
|---|
| 研究機関 | 近畿大学 |
|---|
研究代表者 |
上口 晃 近畿大学, 経済学部, 准教授 (90781344)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 公債 / 高齢化 / 人的資本 / 年金 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究は、理論分析を進展させ、少子化と高齢化という二つの人口動態に直面する政府はどのような政策を行うことによって経済の状況を改善できるかということを明らかにし、政策含意を得ることを目的としている。本年度は、昨年度までに取り組んだ研究を発展させ、Public investment, national debt, and economic growth: The role of debt finance under dynamic inefficiencyをディスカッションペーパーとして発表した。本論文は先行研究と異なり、二期間の世代重複モデルを用いて公債と税収を歳入として政策運営を行う政府を想定した分析を行った。財政政策に対する支出の何割を公債による財源調達によって行うかという、政府の行う政策における公債依存度を示すパラメーターを導入することによって、公債依存度と経済成長率との関係を明らかにした。経済が動学的に非効率的な場合は公債依存度を示すパラメーターと経済成長率に逆U字の関係が生じることを示した一方で、動学的に効率的な場合は公債依存度を示すパラメーターの値の上昇は経済成長率を低下させる効果を持つことを示した。この結果は、経済状況が動学的に効率的か否かということが政策効果の違いを生み出すことを示している。そのため、現実の経済において公債を財源とした政策を行う際に、経済状況を的確に把握した上で政策運営を行う必要があるという含意を提示したと言える。また、Human capital, population aging and PAYG pensions in the OLG modelの内容を精緻化させた上で学会報告を行い、そこでの議論で得られた知見を反映させ、海外の学術雑誌へ投稿する予定である。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画では、前年度までに進展させた研究を発展させ、研究の分析から政策含意を得ることを目標としていた。研究成果である論文Public investment, national debt, and economic growth: The role of debt finance under dynamic inefficiencyで行った分析からは高齢化に直面した経済における政策含意を得ることができ、今後、国内の学会で報告を行う予定である。また、Human capital, population aging and PAYG pensions in the OLG modelについても国内の学会での報告を予定している。このような現状から、令和三年度の研究計画の一部を前倒して研究を進展させていると判断し、研究は順調に進んでいると考える。
|
| 今後の研究の推進方策 |
令和三年度はこれまでに取り組んだ解析的な研究に加え、シュミレーションなどを適切に行うことにより、研究の成果の頑健性を示した上で、新たな政策含意を持つ研究成果が得られるように研究を進展させる予定である。次年度は本研究の最終年度であるため、研究成果の発表、発信を行っていきたい。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、当初予定していたよりも出張回数が少なかったことにより、差額が生じた。ソフトウェアおよびパソコン等の物品に係る費用や学会、研究会への参加のための旅費や英文校正費に用いる計画である。
|
