本研究は、急速な少子高齢化の進展と社会保障費の増大が喫緊の社会的課題となっていた我が国において、これまでほとんど研究が行われていなかった、個人の金融リテラシーと老後の不安の関係に関する研究の不在を埋めた。さらに、研究の途中で、金融リテラシーが老後の不安のみならず、老後不安の要因となる他の要因にも関連していることに気づき、それらの領域を深掘りした。具体的には、家計リスク(例:特殊被害脆弱性)、健康リスク行動(喫煙・ギャンブル依存、飲酒・運動習慣)、そしてコロナ禍での孤独リスクやワクチン回避行動等である。本研究は、金融リテラシーがこれらの点でも人々のリスク軽減に寄与している可能性を提示した。
|