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2019 年度 実施状況報告書

転換社債による企業の資金調達に関する経済分析

研究課題

研究課題/領域番号 19K13740
研究機関高知大学

研究代表者

雨宮 祐樹  高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (70759349)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード転換社債 / 金融契約 / 情報の非対称性
研究実績の概要

本研究は,転換社債の発行における,証券の設計や契約条項のあり方についての理論分析による解明を課題としている.転換社債の役割に関するこれまでの仮説は,その妥当性について,データによる検証が不十分であった.その原因について,これまでの理論研究が不完全であったことが指摘されている.本研究では,これまで別々の仮説において着目されていた,金融市場の非効率性と企業内部の非効率性という2種類の要素を統一的に分析可能な理論モデルを構築し,転換社債の役割に関する新しい仮説の提示,実証的含意の導出,および転換社債による資金調達や関連する法制度設計の実務に応用可能な含意の提示という,3つの課題に取り組むものとしている.
2019年度は,ベンチャー投資における投資家にとっての,投資対象となる事業の生産性に関する情報の不足に着目した理論モデルの構築を行った.これにより,以下2つの結果と含意が得られている.まず,起業や増資などにあたって,まさにベンチャー企業がそうであるように,起業家が拠出可能な資金が十分に少ない状況において,株式や転換条項を付さない通常の債券よりも,転換社債が有用であるこを解明した.また,そのような転換社債の発行において,一定水準以上の企業価値ないしは株価を条件とした転換制限条項の付与が必要であることを解明した.この種の転換制限条項は,一般に,転換に伴う交付による株式の希薄化を抑制する目的に応じるものと理解されるが,本研究によって,投資家にとっての事業の生産性に関する情報不足を軽減する役割があることが,新たに説明されることとなった.
本年度は以上に加え,市場規模に不確実性がある場合における,企業の競争戦略に関する研究,および企業の組織内部におけるリーダーの役割に関する研究を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は,ベンチャー投資における投資家にとっての,投資対象となる事業の生産性に関する情報の不足に着目した理論モデルの構築およびその分析を行った.当該の研究作業によって,ベンチャー投資においてしばしば,転換社債が利用される理論的根拠を明らかにし,また,そのような転換社債において,一定水準以上の企業価値ないしは株価を条件とした転換制限条項の付与が重要な役割を果たすことを明らかにしている.加えて,市場規模に不確実性がある場合における,企業の競争戦略に関する研究を行い,これについては,国際学会にて報告したほか,ワーキングペーパーとしてまとめ,現在査読誌へ投稿中となっている.また,企業の組織内部におけるリーダーの役割に関する研究に着手し,研究会報告を実施した.これらにより,2019年度中に得ることを目標としていた研究結果について,おおむね滞りなく進捗させることができたといえる.
なお,新型コロナウイルス拡散防止策の影響により,2019年度終わり頃より研究協力者との共同作業に若干の困難を伴う場面が生じたほか,本研究課題において特に重要な位置づけとなる,転換社債の役割に関する研究成果について,年度末に予定したカンファレンス報告を実施できなかったことにより,本研究課題の遂行に支障をきたす状況がしばしばあった.2019年度については,当該問題の本格化が年度終盤からであったことにより,年度全体を通した進捗状況に対しては,深刻な影響を受けていない.

今後の研究の推進方策

2019年度において,ベンチャー投資における投資家の問題という観点から,転換社債利用の決定要因と,それらが転換社債の特徴に与える影響を解明した.2020年度においては引き続き,そうした転換社債利用の決定要因を探るための理論分析を進め,論文として成果を公開することを目標とする.また,並行して2021年度にかけて,投資家と企業の関係や企業内部の問題を金融市場の状態と関連付けて分析可能な理論分析の枠組みを構築し,観察しやすいデータによる検証が可能な含意を得て,それらの成果について学会等で報告する.また,これにより,企業の資金調達における証券の設計や,金融に関わる法制度設計の実務に応用可能な,政策的含意を導いていく.
本年度においては,新型コロナウイルス拡散防止策の影響により,主に学会やカンファレンス等での研究発表の機会や,研究会等への参加による専門的知識に関する情報収集,研究協力者との連携などの面で,研究課題の進捗に支障をきたす問題の発生が予想される.また,教育と学部運営にかかる対応のため,予定していたエフォートの配分が困難になる恐れがある.そうした問題により研究課題の進捗に深刻な影響がある場合には,学会等への参加を先送にし,加えて本課題の遂行に十分な期間を確保するため,計画年度の延長によって対応する.

次年度使用額が生じた理由

2020年3月に本研究課題による成果の発表のため予定していた海外でのカンファレンスが中止となったため,その海外旅費として支出する予定であった金額が次年度使用額として生じた.
当該の予算は,2020年度において学会・カンファレンス等で報告機会を確保することができるならば,そのための国内および海外旅費として使用する.また,研究協力者との連携や共同作業を円滑にするほか,オンラインで開催される学会・カンファレンス等への参加を容易にするため,遠隔会議を前提とした研究環境の構築にかかる備品と消耗品を用意するための予算とする.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Pre-emptive Production and Market Competitiveness in Oligopoly with Private Information2019

    • 著者名/発表者名
      石原彰史,雨宮祐樹,中村友哉
    • 学会等名
      46th Annual Conference of the European Association for Research in Industrial Economics
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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