本年度は、研究課題に係る統計解析を精密化するとともに、得られた解析結果を論文としてまとめた。第一に、昨年度中は構造の仮定がある統計解析モデルと、その仮定がないモデルについて、解析結果に差が生じるという問題が生じていたが、この問題の原因を特定・解決した。特に、データに含まれる外生的な変動を識別に利用したことで、仮定の少ないモデルをベースラインの推定に用いることができるようになった。第二に、その解析結果は概ね理論から示唆される予測と整合的であることを確認したが、いくつかの指標については、ある程度の異質性をもつことも判明した。異質的な効果の発見は想定外であったが、コンテクストをふまえると解釈可能であることもわかった。第三に、ベースラインの推定とは異なるデータの変動を利用する複数の統計解析モデルを用いて、主要な結果の頑健性を評価をした。その結果、主たる推定結果は、概ねこれら変化について頑健であることがわかった。一方で、いくつかの指標については、追加的な検証が必要となる可能性も示唆された。また、データの制約上、暴露の長期的影響については評価を行うことはできなかったが、短・中期的影響は先行研究に比して包括的な分析を行うことができた。第四に、これら解析結果を論文にまとめて査読付き国際会議へ投稿し、合計2件が採択された。第五に、査読付き国際学術誌から改訂要求を得ていた複数の論文について改訂を行い、再投稿・査読ののち合計2本が採択された。
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