研究課題/領域番号 |
19K13758
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
古賀 康士 九州産業大学, 経済学部, 講師 (50552709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 貨幣史 / 地域社会 / 在来金融 / 制度補完性 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、2022年度も新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の蔓延・流行の影響を大きく受けた年度であった。申請時に予定をしていた遠隔地における国内調査などは今年度も基本的に行うことができず、居住する福岡県での史料調査と既存の収集史料の分析を中心に研究を進めることになった。 新規の史料調査については、福岡市総合図書館において益冨資料のマイクロフィルムの調査を進めることができた。益冨資料は、平戸藩生月島に拠点をおいた捕鯨業者・益冨組の経営史料を中心とするもので、近年、同館においてマイクロフィルムによる閲覧等が開始された史料群である。本年度は、益冨組と大坂をはじめとする遠隔地の問屋などとのあいだで行なわれた金融取引を記録した経営帳簿を中心に、同史料群に含まれる貨幣・物価、および地域社会に関わる史料の調査・分析を行った。 2022年度の主な研究実績については、2022年9月にポーランド・ワルシャワ大学で開催された INC2022(International Numismatic Congress、国際貨幣学会議)において近世日本の貨幣と地域社会に関する報告を行うことができたことがあげられる。本報告は、高木久史氏(大阪経済大学)が座長となり行った中近世日本貨幣史研究のセッションの一報告である(共同報告者、高木久史氏、櫻木晋一氏(朝日大学)、千枝大志氏(同朋大学))。セッションの準備過程と国際会議における議論を通じて、本研究のテーマである近世日本の貨幣システムと地域社会の関係性について考察を深めることができた。 このほか、前年度までに続き、収集史料の翻刻・分析作業などを進めてきたが、史料紹介・論文などの形でその成果を充分に発表するまでに至らなかった。これらについては、2023年度以降への課題として持ち越されることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度までと同様、国内における新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の蔓延・流行状況が続いたことから、研究申請時に課題としていた国内での史料調査は充分に実施することができなかった。こうした状況下で、遠隔地の国内調査を行うことは控え、年度当初の研究計画の修正案に基づいて、居住地の福岡県における史料調査を中心に行った。 研究成果の発表については、昨年度、新型コロナウイルス感染症によって延期されていたINC2022(International Numismatic Congress、国際貨幣学会議)に参加し、近世日本の貨幣システムと地域社会に関する報告できた。国内と海外において流行状況の違いがあるものの、コロナ禍において海外学会に無事に参加・報告できることが確認できたことは大きかった。また、一般向けの媒体ではあるが、九州幕領の金融拠点の一つ豊後日田に関する概説をまとめることができた(「「日田金」と日田商人――近世日田の歴史像」『西日本文化』504号)。 このように2022年度も新型コロナウイルス感染症の流行に研究の進捗状況は左右されることになった。ただし、コロナ禍を踏まえた年度当初の研究計画案を一定度進めることができたことから、現在の進捗状況は「やや遅れている」と評価した。一方、2022年度もコロナ禍のなかで国内調査が充分に実施できなかったことなどから、研究期間の再延長の申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の蔓延・流行状況に留意しながら、研究を進めていかざるを得ないことが予測される。ただし、2022年4月段階において沈静化の傾向も確認されることから、これまで控えていた国内の史料調査などを可能な限り実施することを考えている。 史料調査については、引き続き益冨組の貨幣・物価関連の史料分析を進めるとともに、コロナ禍で実施することができなかった対象地域(岡山・秋田など)の現地調査を行うことにしたい。また本年度より報告者の所属研究機関の所在地が京都に変わったことから、畿内地域の関連史料の調査も進めることにしたい。これら史料調査の対象地については感染症の流行状況に対応して弾力的に対処することにしたい。 2023年度は最終年度にあたることから、研究成果の報告・発表も積極的に行っていきたい。研究報告としては、2023年6月にブルガリア・ソフィア大学で実施される貨幣関係の研究会で研究報告を行う予定である。また、これに並行して史料紹介・論文の作成・発表も可能な限り行っていく。なお、申請時には、最終年度に報告書をまとめることを計画していた。しかし、コロナ禍によって研究計画が大きく変更したことから、史料紹介・論文などの形での成果発表を優先するなど、柔軟な対応を行うことにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度も新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行・蔓延状況が継続したため、研究申請時に計画していた調査などが実施することができなかった。こうした状況下で、無理な研究費の執行は控え、次年度以降の流行の沈静化を期することにした。 最終年度にあたる本年度は、2023年4月段階で流行の沈静化の傾向が看取されることから、これまで実施できなかった国内の史料調査も実施することを計画している。またブルガリア・ソフィア大学の研究会への参加にも使用する予定である。 とはいえ、感染症の流行状況によっては、計画の変更などが強いられることが予想される。前年度までと同様、調査対象や方法などを変更するなど、柔軟に対応することにしたい。
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