研究課題/領域番号 |
19K13759
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
粟倉 大輔 静岡県立大学, その他部局等, 特任助教 (60757590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 茶業 / 猿島 / 静岡 / 輸出 / 茶産地 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦前期日本の茶産地の比較分析を、主に茶消費への対応という観点から行うものである。茶は、戦前期、特に明治期においては生糸と並ぶ主要輸出品であり、また戦前期を通じて輸出は継続してなされていた。昨年度(2019年度)は、輸出茶の生産を中心としたとされる、静岡茶業と茨城県の猿島茶業との比較を行い、それぞれの類似点と相違点を明らかにすることを試みた。 昨年度は、①茶業史関係および茶産地関係の文献の渉猟、②茨城県の猿島茶業の分析、の2点を中心に研究を進めた。①については、『日本茶業史資料集成』の一部と、『静岡県史』や『清水市史』、また『茨城県史』や『茨城県史料』などといった茶産地を擁する自治体史から、静岡茶業および猿島茶業の実態を把握した。②については、まずは、茨城茶業史の先行研究の整理を行った。猿島茶業の研究については、静岡県には及ばないけれども、一定の研究蓄積は存在する。それらは大変貴重な成果ではあるのだが、一方で、『農商務統計表』や『農務統計表』などの統計資料から確認することができる、茶の種類別の生産量、茶園面積や茶製造戸数といった茶生産に関係する統計データを用いての長期的な分析は、これまでほとんど行われてこなかった。そこで、これら統計データから数量的に戦前期の猿島茶業の実態を明らかにした。またそこから得られたデータをもとに、猿島茶業と静岡茶業との比較をテーマに、2019年度の政治経済学・経済史学会にて報告を行った(2020年1月11日)。現在、この報告内容をもとに論文執筆に着手している。 このほか、2019年9月5日には「さしま茶協会」所属の関係者の方々ともお会いし、猿島茶業の歴史や現在の猿島茶業の状況などについて貴重なお話を伺う機会を得た。実際に茶業に関わっている方々からのご意見やご経験談は、文献あるいは資料からは知ることができない有益なものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学会での報告を終え、また統計データもある程度集まっていることを踏まえて、昨年度中に報告内容を論文にまとめることがきればよかったのだが、一方で、報告後には、戦前期の猿島茶業の資料不足を痛感することともなった。この点を克服するため、報告後は再度の猿島訪問あるいは茨城県内の資料館・博物館の訪問を考えていた、しかしながら、研究代表者の現在の所属先への着任、新型コロナウイルスの感染拡大といった、身辺の状況変化もあり、昨年度中の訪問は断念せざるを得なかった。このため、論文の執筆は思うように進んでおらず、結果的に当初の想定よりも、研究の進捗はやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究については、まずは昨年度に行った猿島茶業の研究を論文としてまとめ公表することを考えている。新型コロナウイルスの感染状況がまだ予断を許さない状況にあることから、どこまでできるのか定かではないが、茨城県および猿島への訪問を行いたい。さらに、猿島とともに研究対象の茶産地である京都宇治の茶業についても分析を進める予定である。京都茶業および宇治茶業の先行研究の整理および文献収集も少しずつであるが進めている。また、こちらも計画段階であるが、京都府への茶業の調査や文献・資料の渉猟も行うことを考えている。これら京都茶業の研究については、本年度中に学会報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由としては、2020年1月以降の茨城(猿島)への訪問およびそこでの資料収集を断念したためである。また、昨年度中に購入を考えていた文献も絶版など購入が不可であったケースもあったためである。これらは本年度の計画の計画に沿って、京都府の茶業関係の文献の購入や、京都への訪問のための旅費として使用することを考えている。
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