研究課題/領域番号 |
19K13760
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
中村 一成 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (30634042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医療費 / 医療史 / 社会経済史 |
研究実績の概要 |
本研究は,医療サービス商品の取引形態を明らかにすべく,雇用を通じた「信用」供与の仕組み,共同体的な相互扶助や名望家の拠出による「信用」供与の仕組み,都市社会政策および都市社会事業による「信用」供与の仕組み,そして公的医療保険としての健康保険による「信用」供与の仕組みについて,史料収集と分析を行うことを目的とする。 今年度も昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,遠方で旅費を使用する形での史料調査を行うことができなかった。そのようななか,神奈川県立公文書館が短時間限定で史料閲覧機会を提供する運用をしてくださったため,この機会をこまめに利用して史料調査を断続的に実施した。 また「公的医療保険としての健康保険による「信用」供与の仕組み」を明らかにすべく,神奈川県横浜市の国民健康保険制度発足時の史料(横浜市役所所蔵)の分析・検討を行った。加えて,前年度に収集した「都市社会政策および都市社会事業による「信用」供与の仕組み」に関わる神奈川県川崎市の救護事業史料や,「共同体的な相互扶助や名望家の拠出による「信用」供与の仕組み」に関わる秋田県羽後町旧田代村「阿部家文書」の分析・検討も断続的に実施した。 最後に,収集済み史料の分析にもとづく研究成果として,「近代日本を漁業出稼ぎで生きる」と題する論文を発表した(大門正克・長谷川貴彦編『「生きること」の問い方』所収)。ここでは,明治大正期に北海道根室地域で大規模な漁業経営を行っていた柳田商店の史料である「柳田家資料」(北海道立文書館所蔵)の分析を通じて,「雇用を通じた「信用」供与の仕組み」の基礎的な構造を解明することができた。ここでの「信用」供与は労働生活に関わるカネとモノ全般にわたるものだが,そのなかに医療サービスの利用と対価の支払いにかかる「信用」供与が含まれていることが,本研究にとって極めて大切な分析成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,遠方で旅費を使用する形での史料調査を行うことができなかったことによる。近隣の史料所蔵機関のご協力のもと昨年度に比して史料収集の進捗を得ることができたが,昨年度の遅れを取り戻すには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度となるため,この間収集できた史料をもってまとめの分析作業を進めることとする。可能なものから研究発表を行い,その必要に応じて補足的な史料調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,遠方で旅費を使用する形での史料調査を行うことができなかったことによる。その分,刊行史料や先行研究・関連文献の購入に費用を充てることができたが,次年度使用額は研究のまとめのための史料補充調査に使用したい。
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