研究課題/領域番号 |
19K13768
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
カン ビョンウ 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (70735365)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特許ライセンス |
研究実績の概要 |
本研究は、インターネット標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)の事例を用い、特許ライセンス戦略の実証研究を行うことを目的にしている。 本年度は三つのことを行った。まず、本研究で用いるデータセットを構築した。構築方法は、IETFのウェブページ上に掲載されている情報をウェブスクレイピングする方法で行った。 次に、上記のデータセットの記述的な分析を行った。特許単位で、特許の指標(その特許の技術的価値、技術的汎用性、新規性、等)を計算し、特許ライセンス方法との関係性を分析した。その結果、ある特許の特徴とその特許のライセンス方法との相関は見られなかった。通常、特許ライセンスは企業の戦略に基づいて行われるが、その際に特許単位での調整はないようである。本研究の提案時には特許単位での分析を想定していたので、研究の位置づけと研究内容に修正が必要であることが分かった。 最後に、標準必須特許に関する勉強会・ワークショップにいくつか参加した。新型コロナウイルスの影響で対面での開催ができず、すべての勉強会・ワークショップがオンラインで行われた。それらの参加を通じ、標準必須特許の諸問題に関する動向を把握することができた。近年の動向として、標準必須特許の標準必須性検討の必要性が高まっていることが分かった。標準必須特許はその特許を保有する企業の宣言により他の企業に知られるが、その宣言が正しいか(つまり、標準必須特許として宣言された特許が本当に標準で使われうる技術であるか否か)は検証されずにいた。過去にもこのような問題は認識されたが、標準必須特許の数が一般特許の数より少ないため、大きな問題として扱われなかった。しかし、5Gの時代に突入し標準必須特許が爆発的に増える中、標準必須特許の標準必須性を検証する必要性が高まったようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の計画がデータベースの構築と記述分析実施であった。その計画は実施できたので、おおむね順調であったと判断した。 一つ課題として残ることは、分析結果は想定と違う結果が出た点である。本研究の提案時には、特許ライセンス方法とある特許の(技術的)特徴に関係性が見られることを想定してたが、想定通りいかなかった。これから研究の位置づけと研究内容に修正が必要である。具体的な対策は「8.今後の研究の推進方策」に述べる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度実施した記述統計の分析から、研究方向と内容に修正が必要であることが分かった。2021年度は、本研究計画に修正を加えたい。まだ決まってはいないが、例を挙げると、特許単位での分析から企業単位での分析に変えることである。企業単位での分析を実施し、どのような新しい知見を得ることができるか探ってみたい。一方で、標準必須特許の標準必須性の検証に関する重要度が高まっていることが分かった。それらも念頭に置き、研究方向と内容に修正を加えてみたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルスの影響で学会・インタビュー調査、等の出張ができなかったためである。 こちらの研究費は物品購入に充てる予定である。物品購入の内訳は、ワークステーション、データ分析ツールの更新・追加ライセンス購入、最新版データベースの購入、書籍及び産業分析レポート購入、等がある。
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