研究課題/領域番号 |
19K13776
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤井 暢人 長崎大学, 経済学部, 助教 (70823350)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 従業員の創造性 / 組織的制約 / パラドックス / 上司行動 / 創造性のマネジメント |
研究実績の概要 |
2019年度においては、主に先行研究のレビューとこれまでの事例研究の資料を整理することで、次の3点の研究成果をあげた。 第1に、従業員がどのようなプロセスを経て、斬新かつ有用なアイディアを導出するのか、また、そのプロセスがどのような要因によって駆動されるのかについて先行研究を整理した。特に、創造性のプロセスに影響を与える要因として、エンパワーリング・リーダーシップや心理的安全に着目することで、従業員がアイディアを生み出すメカニズムを検討した。 第2に、これまでの事例研究によって収集した資料を、4段階からなる創造性のプロセス(問題の定義・準備・導出・検証)に着目することで再検討した。そこでは各段階に影響を与える要因として組織的制約に着目しながら資料を精査した。その結果、これまで創造性を阻害すると考えられてきた組織的制約が、創造性を促進する影響を持ち合わせていることが示された。 第3に、上記の研究成果に基づく2件の学会報告の実施と、1編の研究論文を公刊した。1件目の学会報告では、創造性と心理的安全に関する定量研究について発表した。具体的には、創造性と心理的安全の関係を媒介する要因として援助要請を取り上げ、調整的媒介モデルによって検討した。2件目の学会報告では、創造性とエンパワーリング・リーダーシップに関する理論研究について発表した。具体的には、創造性とリーダーシップの関係に影響を与える要因として、文脈的要因に着目した。研究論文では、精査した資料に基づき、創造性のプロセスに影響を与える組織的制約と、そのマネジメントに関する事例研究を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はおおむね計画通りに進んでいる。ただし、当初は定性調査を実施することを計画していたが、現在、調査対象との相談やパイロット調査の検討を行なっている段階であり、調査の実施には至らなかった。しかしながらこの点については、2020年度にまたぐ形で継続していくため、おおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究実施計画として次の3点を計画している。 第1に、従業員の創造性のプロセスに影響を与える要因として組織的制約を取り上げ、先行研究を整理する。具体的には、時間・予算・仕事の手順を組織的制約として位置づけ、それらが問題の定義・準備・導出・検証という4段階のプロセスに、どのような影響を与えるかについて検討する。以上を通じ、組織的制約が従業員の創造性に与える影響についての仮説導出を目指す。 第2に、先行研究のレビューの対象をチームの創造性や組織の創造性に拡張する。これまで、従業員の創造性に影響を与える要因について検討してきたが、チームレベルや組織レベルに議論の射程を広げることで、創造性と組織的制約の関係をより網羅的に理解することができる。よって、2020年度は従業員の創造性・チームの創造性・組織の創造性に影響を与える要因について先行研究を整理する。 第3に、2019年度における調査対象との相談やパイロット調査の検討結果を踏まえ、2020年度における経験的調査の実施を目指す。ただし、社会情勢に鑑み、調査方法を限定することなく、実施可能な方法を模索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会情勢により経験的調査の実施が困難となったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、調査方法を限定することなく経験的調査を検討・実施することで、適切に執行する。
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