研究課題/領域番号 |
19K13782
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
岩尾 俊兵 明治学院大学, 経済学部, 講師 (50823895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イノベーション / 組織構造 / 組織設計 / 災害復旧 / カイゼン / 改善活動 / 両利きの経営 |
研究実績の概要 |
この研究では、組織の創造性に対してある種の組織の「形」が影響するのではないかという仮説を検証してきた。このとき、創造性の中には、イノベーションを創出する能力に加えて、災害からの復旧力・回復力も含まれる。 今年度は、シミュレーションの再構築・再検証・追加分析、スウェーデンでの国際自動車工場実態比較調査、トヨタグループにおける災害復旧の事例分析などをおこない、組織内外のエージェント・ネットワークの形状と初期資源配分がイノベーションや災害に対するレジリエンスに対して影響することが判明した。 具体的には、組織内の任意のX氏から、ランダムに抽出した別のY氏に対して、「(平均的には)何人を介してつながることができるか」という「組織の広さ」が上述した組織の創造性に影響していることが判明した。ただし、組織が狭い方が常に良い、反対に広い方が常によいといった単純な関係ではない。むしろ組織の状況と適合する組織形態がいくつかあることと、それら組織形態の間には境界条件があることが分かった。そのため、必要に応じて組織形態の切り替えをおこなう必要があることも判明した。 これは、これまでの経営学研究において「コンティンジェンシー理論」と呼ばれてきたものであるが、この研究ではコンティンジェンシー理論に対して境界条件の存在が判明したという点が新しい発見であるといえよう。 こうした研究結果は、これまでの研究成果と統合した上で『イノベーションを生む“改善”:自動車工場の改善活動と全社の組織設計』(有斐閣)として出版された他、国内外の学術誌に査読付き研究論文として公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シミュレーションの構築が予定よりも早く終わったこと、出版計画が順調であったこと、論文の査読がすんなりと通ったことなどから、今年度は予定よりも多くの研究成果を公表できた。当初の計画では、著書はあと2年ほど後に、論文はあと1年ほど時間が必要であるという計算であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究については、当初の予定よりも相当に進捗したといえる。そこで、今後については、当初は時間がかかりすぎて難しいだろうと考えていた課題、発展的な課題について取りくんでいきたい。特に、組織の創造性と収益性を両立させる「両利きの経営」に対して組織の形がいかなる影響を与えるのかについて研究していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が早く、翌年度予算の前倒し使用申請をおこなっていた。その結果、前倒し使用が可能となったものの、今後は前倒し額が大きすぎたという理由による。次年度使用額も大きくはないため、論文校正など必要な費用に充てていきたい。
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