研究課題/領域番号 |
19K13788
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
中原 翔 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (50780681)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織的不正 / 制度派組織論 / 違法市場研究 / 組織不祥事 / 構築主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、組織的不正(organizational wrongdoing)がなぜなくならないのかを理論的・経験的に明らかにすることである。この目的に際して、本研究では制度派組織論や違法市場研究の知見を活用し、制度を通じて組織的不正が誘発される様子を事例研究によって明らかにした。まず、令和2年度までは、組織的不正研究の理論的検討と経験的検討を行った。理論的検討としては、組織的不正研究を制度派組織論に根ざしながら展開するパルマー(D. Palmer)の研究に着目し、彼が「制度が組織的不正を誘発する」と言及する理論的根拠を明らかにした。その上で、わが国において「制度が組織的不正を誘発する」事例がどのようなものかを、わが国における燃費不正事例について経験的検討として行った。具体的には、三菱自動車とスズキの両事例において燃費試験基準(JC08モード)が燃費不正を誘発したのかを論証し、国内査読付き論文として投稿した。 続いて令和3年度では、このような理論的検討と経験的検討を組織的不正研究の類似分野である組織不祥事研究に援用すべく、(制度派組織論や違法市場研究のメタ理論に位置づけられる)構築主義の立場から「不祥事」の分析を行った。具体的には、「不祥事」がなぜなくならないのかという問題意識から、「不祥事」を社会問題の一つとして捉えた上で、「不祥事」報道に着目しながら新聞記事の経時的分析を行った。その結果、「不祥事」は、「1. 特定の主体による一方的な暴力や危害」、「2. 不適切な資金移動」、「3. 偽装と隠蔽」のようにカテゴリー化される現象であることを発見した。つまり、このカテゴリーに示されるように、時代ごとに「不祥事」として語られるものが異なり、それぞれ社会問題として構築されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施計画にある理論的検討と経験的検討を実施済であるため、おおむね順調に進展していると判断した。なお、令和4年度は、これまでに明らかにした発見事実を整理し、国内外へ研究成果として発信していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでに蓄積した研究成果を積極的に発信していくこととする。したがって、今後の研究計画としては、組織不祥事や組織的不正がなぜなくならないのかという問題意識の下に執筆した単著や共著の書籍を公刊していくことを主たる目的とする。また、その書籍公刊に関連した学会報告やその他の研究発表などを行うことで、研究成果を広く社会に還元していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況としては、必要であると考えていた書籍の購入が見送られたためである。なお、本助成金の使用計画としては引き続き書籍の購入に充てることとする。
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