研究課題/領域番号 |
19K13791
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研究機関 | 福山平成大学 |
研究代表者 |
堀越 昌和 福山平成大学, 経営学部, 教授 (00723777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 西日本豪雨 / BCP / 事業承継 / 経営者の健康 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
近年のわが国では、自然災害等の突発的なリスクが頻発している。こうした状況下、後継者不在と経営者の高齢化が進展する中小企業の一部は、被災を契機に廃業を余儀なくされている。先行研究ではこれまで、BCPを中心とした事業継続への取り組みと、後継者問題に対処する取り組みは、個別に論じられてきたが、長期的な事業継続のマネジメントを進めていく上で、両者を切り離して論じることは難しいと思われる。 以上の問題意識を背景に、西日本豪雨の被災地中小企業を対象としたアンケート調査とインタビュー調査を通じて、リーダー不在の事態への対処等、自然災害からの復興プロセスにおける「事業承継計画」の有効性と、その活用の促進に向けた課題を明らかにすることが、本研究の課題であった。 この課題の達成に向けて、当該年度は2019年度に実施したアンケート調査への回答企業の内、二次調査への協力を表明した企業に対するインタビュー調査を実施した。ところが、COVID-19の影響により辞退者が続出、当初予定の40社に対して、インタビュー調査を敢行できたのは10社にとどまった(訪問6社、遠隔4社)。そして、調査の結果、経営者が後継者に期待することは、地域の災害特性を把握しつつ、自社の地域貢献を進めていくリーダーシップであること、また、それらの涵養のためには、必ずしも文書化された事業承継計画やBCPは必要ではないと、経営者は考えていることが示唆された。 また、本研究のアンケート調査に加え、COVID-19の影響を調査するために実施したアンケート調査(注)の結果、中小企業が自然災害等から生き残っていくため必要な視点は事業承継計画ではなく、「経営者の健康問題」であることが示唆された。 (注)本研究計画とは別途、予算措置の上、実施された。なお、本研究のアンケート調査の内容や対象先とは一部重複するが、基本的に両者は別物である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で、当初計画比で半年程度の遅延及び方法の変更を余儀なくされている。他方で、自然災害と新興感染症という多重災害下の中小企業の経営実態や事業継続上の課題を探求することができた。前者に関して、当該年度は40社に対してインタビュー調査を実施する計画であったが、敢行できたのは10社にとどまった。また、実施時期に関しても、当該年度の前半がまるまるつぶれ、大幅に遅れることになった。これらは、自由な行動の制限や企業への配慮に加え、企業を取り巻く状況の激変-例えば、先行きの業績の不透明さ、感染予防策の不備、経営者の気力の減退や、一部の企業は廃業に陥る-など、様々な理由による。なお、本報告書作成時点でも流行の終息は見えず、また、企業が置かれた状況も好転の兆しを見せているとは言い難く、当初計画に復することは困難と思われる。 他方、後者について、中小企業が自然災害等から生き残っていくための必要な新たな視点「経営者の健康の問題」は、本研究計画が対象とする地域や企業が多重災害下(西日本豪雨による被災後まもなくCOVID-19の影響を被った)にあったからこそ得られた、本研究の副次的成果であると思われる。このことは、本研究計画とは別途、COVID-19の影響を調査するために実施したアンケート調査と併せて、分析を進めた結果である。上述の通り、当初計画に復することは困難であるが、今後は、こうした新たな視点を踏まえて、所定の成果の達成に努めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下のように研究を進めつつ、本研究の課題である「リーダー不在の事態への対処等、自然災害からの復興プロセスにおける事業承継計画の有効性と、その活用の促進に向けた課題」を考察する。ただし、研究実績の概要の欄でも述べたように、復興プロセスにおける「事業承継計画」の有効性そのものが棄却される可能性が大きい。 ① 2回目のインタビュー調査(10社) ② 追加のアンケート調査(500社) なお、研究を遂行する上での課題であるが、当初計画比で半年程度の遅れを見ているため、最終年度となる2021年度内に考察を終えることができない可能性もある。その場合、期間延長を申請することも検討しなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は主に、アンケート回答者のうち40社対象としたインタビュー調査を実施する予定であった。ところが、Covid-19の影響により辞退者が続出、インタビュー調査を敢行できたのは10社にとどまった(訪問6社、遠隔4社)。また、所属学会の部会及び全国大会は全て、中止又は遠隔による開催となった。以上により、当該年度は当初計画に比し、大幅な資金の余剰が生じた。 また、2021年度では、引き続き、Covid-19の影響を考慮しながら、研究を進めていくことになるが、2020年度の状況を見る限り、当初計画通りにインタビュー調査を実施することは困難と思われる。そこで、当該年度の副次的な成果を踏まえ、インタビュー調査の規模の縮小に加えて、追加のアンケート調査を行っていく。以上により、当初予定していた旅費や人件費・謝金の多くを「その他」に振り替える予定である。
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