研究実績の概要 |
研究期間の最終年度にあたる本年度は、最終的なアウトプットの創出に努めた。すなわち、前年度および前々年度までに進めてきた先行研究のレビュー、データの収集と分析をもとに、書籍および論文を執筆した。主なものとしては、書籍について『組織衰退のメカニズム:歴史活用がもたらす罠』(白桃書房)、論文について "When a dominant CEO hinders exploration in a firm: A longitudinal case study from Japan" が挙げられる。後者の論文については、Journal of Business Research (Q1, インパクト・ファクター=7.550)に掲載された。 本研究の目的はレトリカル・ヒストリーが失敗する場合のメカニズムを明らかにすることであった。上述の書籍『組織衰退のメカニズム:歴史活用がもたらす罠』とにおいて、"When a dominant CEO hinders exploration in a firm: A longitudinal case study from Japan" 組織の栄光の歴史をレトリカル・ヒストリーで活用することによって組織に衰退をもたらすメカニズムを明らかにした。これは、ニーチェが150年前の著作『生に対する歴史の利害』で論じた「記念碑的歴史」の過剰がもたらす不利益にも大まかに通ずることである。ただし申請者の研究では、ニーチェが論じなかったことで新たに発見したメカニズムがある。それは、記念碑的歴史の過剰が組織学習の探索(exploration)や深化(exploitation)にネガティブな影響を与えるメカニズムである。
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