研究課題/領域番号 |
19K13795
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中尾 公一 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (60807098)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 条件不利地域 / ソーシャル・ビジネス / コミュニティ・ビジネス / NPO / ボランティア / 協働 |
研究実績の概要 |
本研究は総務省の「条件不利地域」関連法適用地域で活動する、ソーシャル・ビジネス/コミュニティ・ビジネス(SB/CB)の起業家・経営者やその資源提供者に対する訪問調査を、文献調査とともに定性的に分析し、SB/CB経営者の資源調達に際する、コーゼーション(将来の不確実性を極力少なくし、目的をたてその実現方法を逆算して考えること)、ブリコラージュ(即興で何とかすること)やエフェクチュエーション(将来の不確実性を受け入れ、関係者と実行可能な手段を探ること)等の、思考・行動様式を解明しようとするものである。 今年度は、①前年度に行った訪問パイロット調査を深掘りした踏まえたケース・スタディ、②前年度に国際学会発表を行った条件不利地域のNPOに財務状況DB分析に基づく論文作成、③条件不利地域でも活躍が期待される、芸術系NPOの財務状況NPOのデータ・ベース(DB)作成を行った。 ①のケース・スタディについては、パイロット調査で訪問したNPOの職員、行政職員、他のNPO関係者にも対して、オンラインを活用して更なるインタビュー調査を実施し、NPOと行政、ボランティアの三者の協働関係について学会発表を行った。②の条件不利地域の財務状況分析については、前年度の国際学会発表での指摘を踏まえた修正等を加え、英語論文を執筆し国際誌への投稿を試みている(現在は査読中)。③は、新型コロナ禍に伴う累次の緊急事態宣言発出により訪問調査が難しくなったことを踏まえ、条件不利地域でも活躍が期待される芸術系NPOに焦点を当ててDB作成を行っている。 しかしながら新型コロナ禍の影響で緊急事態宣言が何度も発令されたことに伴い、当初想定していた訪問調査の実施が極めて困難となったため、全体として当初の研究計画の実施延期や変更を余儀なくされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ禍の影響で緊急事態宣言が繰り返し発令され、訪問調査が極めて難しくなるなど、研究を実施する環境が整いにくかったため。 年度当初から、新型コロナ禍に伴う緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出が厳しく求められる環境下で訪問調査を行うことが憚られた。また教育や大学の運営業務でもコロナ対で学期開始が遅れ、またオンライン講義や新規安全対策の対応にも追われた。調査実施時期の主眼として考えていた夏期休業期間中には自粛期間に伴う学期開始の遅れを回復することが求められた。このように当初の想定に比べ、教育等に対するエフォートが大幅に急増し、研究へのエフォートが著しく低下する状況となった。 また春期休業期間中もコロナ禍の感染者の増加に伴い、感染拡大防止の観点から県外出張等の自粛が求められる等、訪問調査の実施が極めて難しい状況となった。 また調査予定先のNPO等についても、年間を通してコロナ禍の影響でその運営等が多大な混乱期にもあったものとも推察した。このような状況下で、研究代表者の研究のために、広域移動を伴う訪問調査を行い、万が一自他ともに感染を広げることとなった場合には、社会通念上も、研究倫理上も、本研究の妥当性も疑問符に付されかねないと考えた。その結果、大変不本意ながらも研究の進捗が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ禍の全国的な感染拡大は現在も継続している。研究代表者が勤務する兵庫県は緊急事態宣言が発出された地域となっており、出張も強い自粛が求められている。直ちにこの状況が好転する状況は考えにくいことから、早くとも夏期休業期間までは訪問調査の実施は見合わせることとする。 その見合わせている期間中に、①前年度に学会発表したケース・スタディを学術論文として投稿を試みる。②また条件不利地域のNPOの財務状況の論文については然るべく査読対応を行う。③芸術系NPOのDBを完成させ学会発表に備える。④加えて、条件不利地域のSB/CBに関するレビュー論文の執筆に着手する。⑤さらに一昨年度から継続している、条件不利地域のNPOのエフェクチュエーション・コーゼーション等に関する学術論文執筆も行う。 夏期休業期間以降の新型コロナ禍の感染拡大・抑制状況を予測することは難しいが、我が国でも大規模なワクチン接種が始まっている。それらの状況も注視しつつ、感染拡大が収まり、行動抑制が緩和される等、訪問調査を行いやすい社会環境となってきた場合には、昨年度と今年度に行う予定の訪問調査の遅れを少しずつ取り戻していくこととしたい。 しかし前年度の遅れを抱えた上で、さらに新型コロナ禍の収束が年度後半になっても見通せないなどの状況となった場合、次年度中に所期の目標とされていた研究成果の発揮は見込めない。その場合には研究年度の延長も視野に入れた上で、可能な限り、所期の研究成果を出せるよう努めていくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大と、それに付随する累次の緊急事態宣言の発出に伴い、今年度に行う予定であった、すべての国内外の出張を見合わせたため。 訪問調査が滞ったことで、旅費の執行や調査によって得られた音声データのテープ起こし費用の執行が滞った。さらに国際学会を念頭に計上していた海外出張旅費の執行も見送られた。その結果、次年度使用額が生じた。 使用計画については、次年度でも新型コロナ禍の感染拡大・抑制状況を見極めつつ、国内出張実施の可否を見定めていく。執行が難しくなりそうな国内出張旅費に関しては研究に必要な書籍購入に充当するすることとしたい。国際学会発表で予定していた海外出張費用に関しては、1年後も海外出張が困難な状況が続く見通しが高いことから、国際学会誌投稿に必要な英文校正費・投稿料等への充当を検討していく。 なお次年度は本研究の最終年度にあたる。しかし新型コロナ禍に伴い、過年度に発生してきた次年度使用額を含めたすべての予算執行は難しいものと推測する。かかる状況での無理な予算執行は却って研究成果を損ねることになりかねない。そこで次年度は新型コロナ禍の状況と、訪問調査の実施を通じた当初計画の成否を見極めつつ、やむを得ず研究期間の延長も視野に入れることも検討していくこととする。
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