研究課題/領域番号 |
19K13797
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
横尾 陽道 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (30382469)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変革マネジメント / 組織文化の形成プロセス / 不連続的変革 / トップ・マネジメントのリーダーシップ / 組織学習 |
研究実績の概要 |
令和1年度は,①組織文化の形成プロセスと変革マネジメントのプロセスとの関係について理論的に詰めること,②理論的考察にもとづくアンケート調査を実施することを研究課題とした。①の理論研究では,組織変革論の中でも特に不連続的変革のプロセス・マネジメントに関わる議論を中心に関連文献を渉猟し,組織文化が形成されるプロセスとの関係性について述べた既存の理論枠組みを精緻化することに努めた。②の実証研究では,①での理論的考察を踏まえたアンケートを設計し,調査を実施した。調査対象は,共同研究(*戦略経営研究グループ(代表:十川廣國慶應義塾大学商学部名誉教授)にて,継続的に実施している国内製造業(大企業)を対象としたアンケート調査)と可能な限り関連させるために,単体の従業員数が300人超の国内製造業とし,これらの企業で研究・開発(R&D)業務,生産業務,販売業務(*営業および営業企画業務を含む。売り場担当業務は除く)に従事する正社員(*管理職(職能部門での部長,次長,課長,係長クラス),一般従業員(主任クラスを含む))に対してアンケートを依頼し,720名から回答を得た(*有効回答は,研究・開発業務232名(管理職114名,一般従業員118名),生産業務234名(管理職117名,一般従業員117名),販売業務236名(管理職117名,一般従業員119名),合計702件)。調査に用いたアンケート票は,約20問(*調査対象を選別するためのスクリーニングにおける設問を含む)の設問で構成した。アンケートの回答依頼から回収までの作業は,株式会社マクロミルに業務を委託し,令和2年2月に同社のwebアンケート・システムを用いてスクリーニングを行った後に調査を実施し,集計結果を「「変化に対する従業員の意識と行動」に関する調査」として,『千葉大学経済研究』にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究については,おもに文献研究によって組織文化の形成プロセスに対する理解を不連続的変革のプロセス・マネジメントに関わる議論に十分応用可能であることが確認できている。また実証研究(量的研究)については,理論研究を踏まえたアンケート調査を実施し,不連続的変革の速やかな遂行に向けて変革の中核的な担い手となる可能性が高い従業員層を職種別および組織階層別に把握することができ,以降の研究につながる成果が得られている。以上の理論研究と実証研究(量的研究)においては,研究成果を公表しており,計画どおりに研究が「おおむね順調に進展している。」状況にある。しかしながら,新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,おもに3月に予定していた実務家への聞き取り調査(*量的研究の結果を踏まえた詳細な組織プロセスを把握するための質的研究)の実施が年度内に困難となったことから,研究全体の遂行状況は「やや遅れている。」と認識している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,令和1年度に行った理論研究と実証研究(量的研究)を踏まえ,理論枠組みをより精緻化していくとともに,令和1年度に実施することができなかった聞き取り調査を可能な限り早い段階で行えればと考えている(状況に応じてインターネットを介した方法も検討する)。その上で,以下の研究を推進していく。①不連続的変革のプロセス・マネジメントにおいて,新たな組織文化の形成および定着の中核的な担い手となりうる主体の活用とその活用のタイミング(ステージ)を把握するための調査ポイントを整理・検討する。②調査ポイントを具体的な設問に反映させたアンケート調査を実施することで量的データを収集し,分析・考察を行う。③量的データでは把握しきれなかった詳細な内容や量的研究で浮かび上がった注目すべき点について聞き取り調査を行うことで質的データを収集し,量的データとあわせて分析・考察を加えていく。④これらの研究結果を研究会等の機会で研究者や実務家と議論しつつ,論文および資料等の形式でまとめていく。
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