研究課題/領域番号 |
19K13797
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
横尾 陽道 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (30382469)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変革マネジメント / 組織文化の形成プロセス / 不連続的変革 / 変革の初期段階 / 管理職 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,これまでの理論研究と実証研究から得られた考察を踏まえ,アンケート調査によって国内製造業における不連続的変革の迅速かつ確実な遂行に向けた組織内外の変化に対する管理職層の意識と行動の特性について把握していくことをおもな研究課題とした。アンケートは,過年度調査と同様に共同研究で継続的に実施している国内製造業(大企業)に関する実態調査の内容と関連させる目的で単体の従業員数が300人超の国内製造業を調査対象とし,これらの企業で研究・開発,生産,販売の各部門に従事する管理職層(職能部門での部長,次長,課長,係長クラス)438名から回答を得ることができた(研究・開発部門147名,生産部門147名,販売部門144名)。ここで管理職層に焦点を定めたのは,令和1年度調査で彼らが不連続的変革の初期段階プロセスを推進する中核的な担い手となり得ることが確認されたためである。調査票は,論説としてまとめた理論的考察(Yokoo,2020)と令和1年度調査の結果(横尾,2020)をベースに設計し,約30問(*調査対象を選別するためのスクリーニングの設問を含む)の設問で構成した。令和2年度調査では,ここ一年間以上継続している新型コロナウイルス感染症の感染拡大という不連続の環境変化に対する企業の適応状況を把握するために,回答者が統括する部門の特性や傾向についての設問(ビデオ会議システム等のオンライン・コミュニケーション・ツールを用いた業務運営の導入による組織コミュニケーションへの影響)も設置した。アンケートの回答依頼から回収までの作業は,株式会社マクロミルに業務を委託し,令和3年2月に同社のwebアンケート・システムを用いてスクリーニングを行った後に本調査を実施した。以上の調査結果は,『千葉大学経済研究』に「「変化に対する管理者の意識と行動」に関する調査」としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究では,組織文化の形成プロセスに関する理解を不連続的変革のプロセス・マネジメントに関わる議論に十分応用可能であることを確認し,一連の考察を論説としてまとめている(Yokoo,2020)。また実証研究(量的研究)では,理論研究と過年度調査を踏まえたアンケート調査を実施し,不連続的変革の初期段階における中核的な担い手となり得る従業員層と彼らの意識・行動の特性,また不連続の変化が生じた初期状況における組織の特性による環境適応度の差を把握することができた(横尾,2021)。以上の理論研究と実証研究(量的研究)の研究成果はすでに公表しており,計画どおりに研究が「おおむね順調に進展している。」状況にある。しかしながら,聞き取り調査(*量的研究の結果を踏まえた詳細な組織プロセスを把握するための質的研究)の実施は,令和1年度から続く新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの影響で十分に行えていない状況にある。このことから研究全体の遂行状況は「やや遅れている。」と認識している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,過年度に行ってきた理論研究と実証研究(量的研究)を踏まえ,設問内容を深化・充実させたアンケート調査等を実施する予定である。具体的には以下の研究を推進していく。①不連続的変革のプロセス・マネジメントにおいて,変革の中期段階以降に変革を組織全体に波及させる中核的な担い手となりうる主体,リーダーシップのあり方,組織学習の促進要因を把握するためのポイントを整理・検討する。②上記のポイントを具体的な設問に反映させたアンケート調査を実施することで量的データを収集し,分析・考察を行う。③量的データでは把握しきれなかった詳細な内容や量的研究で浮かび上がった注目すべき点について聞き取り調査を行うことで質的データを収集し,量的データとあわせて分析・考察を加えていく(*聞き取り調査で十分な質的データの収集が困難な場合は,アンケート調査の記述回答等,代替的な手段を講じてデータ収集を試みる)。④これらの研究結果を研究会等の機会で研究者や実務家と議論しつつ,論文および資料等の形式でまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は,参加を予定していた全ての学会と研究会がオンライン開催になったことや現地調査を実施できなかったため,旅費が全く生じず,令和2年度予算でかなりの未使用額が生じた。令和3年度は,これらの予算を令和2年度に十分に行えなかった現地調査のための旅費として使用することを計画している。ただし,「今後の研究の推進方策」の部分で述べたように,新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって行政や本務校の方針・指示で出張が困難になった場合は,質的データを収集しうる代替的な設問(記述回答等)の数を増やすとともに,より多くの回答数を確保する等,その分の予算をアンケート調査に割り当てていくつもりである(*調査の業務委託費用は,設問数と回答数によって変動)。
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