本研究の目的は、顧客志向的なものの構成とそれを実施する業務創発のメカニズムを明らかにすることである。これまで、製品やサービスを生産する企業は、「顧客志向」という準則を持ち、マニュアルや行動プログラムを適切に配置することによって実現されると考えられてきた。しかし、このような枠組みでは、顧客の経験価値や価値共創といったポストモダンの価値創造を説明することは困難である。そこで、本研究では存在論的検討及び方法論的転換を図り、質的調査を通じて実証的な研究を行った。最終年度では、これまでの理論的研究及び調査結果を発表することと、実社会への政策的提言の方向性を検討することに注力した。研究結果の学会での発表や協力者への細やかな共有の結果、研究対象とした団体への調査結果を踏まえた介入的な研究への端緒をつかむことができた。これは次年度以降の研究の足掛かりになると期待される。加えて、本研究助成を受けて2021年に発表した筈井俊輔『なぜ特異な仕事は生まれるのか:批判的実在論からのアプローチ』京都大学学術出版会により、日本社会学会奨励賞・著作の部を受賞することができた。
|