本研究の学術的な意義としては、社会的逸脱行為がイノベーションや社会問題の発見に対してもっている機能を分析した点にある。目的合理的観点からは、グレーゾーンや適法性に疑いのある行動をとるとするならば、それは事業存続に必要な証拠を収集するためであるという観点からの整理を試みた。他方で、社会的逸脱はそのような目的合理的な動機に限らず生じる側面もあり、そのような事件や事故は、社会が社会問題について学習する機会ともなっている。多様なアクターからなる創発的な問題構築プロセスを理解するためには、企業家だけでなく、他の関係主体や一般大衆の態度形成に関する研究もまた求められる。
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