研究課題/領域番号 |
19K13811
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
朝岡 大輔 明治大学, 商学部, 専任講師 (20824345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コーポレートガバナンス / 認知科学 / 合併と買収 (M&A) / 意思決定 / 取締役会 |
研究実績の概要 |
今年度は、企業の意思決定に関する認知科学的なプロセスの知見にかかる文献の収集を行いつつ、取締役会の意思決定におけるグループダイナミクスの研究を進めた。具体的には、コーポレートガバナンス改革下において本格的に導入されることとなった独立社外取締役を含めた取締役会が、正の効果である集合知を発揮しつつ、負の効果であるグループシンクを回避するための、認知科学的な観点からの条件の検討を進めた。関連して、コーポレートガバナンスの枠組みの下における取締役会の意思決定の監視の問題について、社外取締役の服従心理や心理的な報酬に見られる同様の認知科学の知見を適用して研究を進めた。 その過程で、一つの具体的な表れとして、日本企業において観察される、買収と合併 (M&A) の意思決定が損失発生に至る事象を題材とする研究にも発展させた。この研究においては、企業内部のM&Aの評価や意思決定における認知科学的な要素を抽出し、経営者の自信過剰や自尊心、エスカレーションや勝者の呪い、アンカリングやエンダウメント効果などのバイアスの影響について分析を行った。また、独立社外取締役の報酬や兼任における利益相反性や無意識の経営者への好意を含めた監視の有効性のほか、独立社外取締役の比率やCEOと取締役会議長の分離に見られる取締役会の設計などのコーポレートガバナンスの枠組みが、企業の意思決定における損失回避に寄与する影響についても検討を行った。M&Aの意思決定に関するこれらの研究成果は、今年度において、朝岡 (2019), Asaoka (2019) として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って研究を進め、その過程でM&Aの意思決定に関する論文2本の発表に結実した。さらに取締役の意思決定におけるグループダイナミクスに関する論文1本を海外論文雑誌に投稿済みである。計画に対して概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究に取り組み、取締役の意思決定におけるグループダイナミクスに関する論文1本を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張の見合わせによって旅費の支出額が当初予定より減少したため。次年度はオンライン環境で研究を継続するために使用する予定である。
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