研究実績の概要 |
2021年度は、前年度から取り組んでいるアフォーダンスに注目し、既存研究に基づき、ICTの使用で生じる集団規範を整理し直し、どのようにICTの使用による認知的負荷を減じられるかに関して検証した。まず、情報整理に関する規範である。ICT上では、組織メンバー間でテキストやファイルの頻繁なやり取りが生じるために、それらを見やすく、把握しやすい状態に整理する規範があることで、不要な注意資源の消費を防げるために重要である(e.g., Hwang et al., 2015)。次に、時間志向に関する規範である。様々な通知による注意の引きつけは迅速な情報の伝達につながるが、ICT上では反応の時間差が生じるために、この時間差によって必要な情報量の不足や情報間の理解不足が生じ、認知的負荷を高める(e.g., Cramton, 2001)。それゆえ、時間志向を摺り合わせたタイムリーな反応に関する規範が重要である。最後に、的確な伝達に関する規範である。様々なメンバー間での情報のやり取りが活発化する一方、ICT上では意図の伝達の難しさや、やり取りする内容理解の複雑さによって認知的負荷が増加するために、互いの円滑な理解を促す、的確な伝達が求められる(e.g., Tenzer & Pudelko, 2016)。こうした議論に基づき、企業から得た1126人のデータを検証した結果、的確な伝達に関する規範は、ICTの使用で生じる認知的負荷を低下させることがわかった。
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