本研究の目的は、海外における自動車部品サプライヤーの取引先の拡大プロセスを明らかにすることである。今年度も海外調査を行うことができなかったため、これまでの調査で収集した文献や自動車部品サプライヤーに対するインタビュー調査に基づいて、海外において新規取引先を拡大するための親会社の役割に着目して研究を進めた。 本年度は、自動車部品サプライヤーの事例に基づいて新興国市場を開拓する際に親会社が果たす役割について考察した。分析の結果、親会社の役割は2点あることが明らかになった。第1に販路の開拓である。親会社が日本国内で営業活動をすることによって海外の新規取引につなげていた。第2に現地生産の支援である。親会社は海外で生産する部品の試作から工程設計を担当し、それを海外に移転している。また、顧客の要望するQCDの水準を海外生産拠点が達成するための技術支援を行っている。すなわち、親会社はマザー工場としての役割を果たしているのである。この結果を学会において公表している。 研究期間を通じて、自動車部品サプライヤーの海外子会社が取引先を拡大するプロセスは親会社主導型、海外子会社主導型、親会社・海外子会社連携型の3点があることが明らかになった。取引先の拡大プロセスに関連する要素は、親会社による役割付与、親会社による支援、海外子会社の意思決定、現地環境の4点があった。そして、取引先の拡大プロセスの種類ごとに必要となる要素は異なっていた。
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