研究課題/領域番号 |
19K13817
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森谷 周一 関西学院大学, 商学部, 助教 (30802037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 逸脱的活動 / 日常的活動 / ミドルマネジメント / 戦略的役割 / 役割葛藤 |
研究実績の概要 |
本年度は、ミドルマネジメントの逸脱的行動がなぜ、どのように実践されているのかを明らかにするために、逸脱的行動と対置される日常的活動(Operational role)に着目し、両者の関係性を捕捉することを試みた。逸脱的活動が組織に柔軟性や変化をもたらす活動であるのに対して、日常的活動は組織の安定や継続に貢献する。 両者の関係性を非構造化インタビュー調査に基づいて探索的な検討を行ったところ、それぞれの役割間でミドルマネジメントは役割負担や役割葛藤といった役割上のストレスを認知することが観察された一方で、新たな顧客の開拓や新サービスの提案といったミドルマネジメント発の逸脱的活動は必ずしも日常的活動によって阻害されるわけではないことが明らかとなった。より具体的に述べると、アイデアの創造や上司の説得といった逸脱的活動の過程において、日常的活動を通じて形成された社会的ネットワークや、自身に対する信頼の蓄積がその成否と密接に関連している。 以上から導出される含意としては以下の通りである。すなわち、ミドルマネジメントが逸脱的活動を成功裏に進めていくうえでは、あまりにも大きすぎる役割負荷をミドルマネジメントに付与することは逸脱的活動に従事する余裕を奪ってしまう一方で、ある程度の日常的・逸脱的活動の両面に対する役割期待を提示することは、むしろ逸脱的活動の成功にとっては重要であるといえる。したがって、役割葛藤や役割負担がミドルマネジメントのパフォーマンスを低下させるとは一面的に断定することはできない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおよそ、計画通りに調査と論文執筆をおこなうことができた。まず、本研究の主要な学問領域である経営戦略論分野における先行研究を渉猟・整理し、研究課題を導出することができた。次に、その後の探索的な調査によって、ミドルマネジメントの逸脱的活動がいかなる文脈で促進されうるのかを明らかにすることができた。そして、それらの成果はすでに論文として学術雑誌への掲載が決定している。また、今後の研究の方向性を見定めるために、ミドルマネジメントの職務負担や人的資源管理上の役割などに注目し、すでに関連する文献のレビューにとりかかっている。以上から、おおむね本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては、どれほどの負担をもたらす職務環境下でミドルマネジメントが逸脱的行動に従事することが最適であるのかを探索するために、管理者としての基礎的な役割の多面的な検討を行う予定である。具体的には、人材マネジメントにおけるミドルマネジメントの関与に焦点を当てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張・調査を予定していたが、諸般の事情で中止となったため、次年度使用額が生じた。当該助成金は、翌年度分として計上し、調査や学会報告のための出張費として使用する予定である。
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