2022年度は、ミドルマネージャーが逸脱的活動に従事することが期待されるにもかかわらず、実際にはそのためのアイデア創出等に時間を割くのが容易ではないという現代的な課題を鑑み、多様な役割が課される状況下で逸脱的活動に従事することが可能となるような、新たなミドルマネージャー像の理念型の提唱を試みた。これまでのミドルマネージャー研究を領域横断的に整理することで、現代的なミドルマネージャー像をより精緻に描き出すことに成功し、「自己対話型ミドルマネージャー」を提示するに至った。ミドルマネージャーに関連する既存の研究では、単一の役割のみに焦点を当て、ミドルマネージャーの役割や貢献に関する理論構築および実証が進められてきたが、ミドルマネージャーが受ける多様かつ、時には相反するような役割期待にいかに応えていくのかという点は看過される傾向にあった。しかしながら、近年の日本企業においてはミドルマネージャーのプレーヤー化や、管理職の質的・量的な負担増などが指摘されており、上述のような複数の役割を前提にしたミドルマネージャー像を提示し、彼らの貢献のあり様を描写することの現代的意義は決して少なくない。さらに、ミドルマネージャーが逸脱的活動に従事するための条件を探索する中で、人的資源管理の運用者としての役割が、人的資源管理の成否に重要な影響を与える可能性が見出された一方で、日本企業を対象とした本格的な運用研究は乏しいことがわかった。日本企業の人的資源管理上の特殊性を前提とすると、人的資源管理の運用におけるミドルマネージャーの役割についての日本モデルの探究に、新たな研究可能性が存在すると思われる。
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