本研究の課題は、「期間限定」において時間圧力(タイムプレッシャー)が消費者の情報処理と購買意図に与える影響を明らかにすることである。 令和2年度は、期間限定セールの対象となったスニーカーに関するアンケート実験を行い、分析を実施した。アンケート実験で、期間限定の有無(1時間限定or限定の記載なし)と、値引き金額(500円、2000円)を操作したシナリオと商品(スニーカー)の画像を被験者に提示する。そして提示シナリオを読んでもらったうえで、知覚した時間圧力の強さ、商品に対する知覚価値、ならびに購買意図についての質問に回答してもらうという流れである。スニーカーに対する製品関与の高低を考慮した多母集団同時分析を実施した結果、①スニーカーに対する製品関与の高い消費者は期間限定と値引きの手がかりから時間圧力を知覚している。②スニーカーに対する製品関与の高い消費者において、知覚した時間圧力が直接、購買意図に正の影響を与えるだけではなく知覚価値を介して間接的に購買意図に正の影響を与えていることの2点が明らかになった。 令和2年度の研究成果については,日本マーケティングサイエンス学会第108大会で研究発表を実施している。研究期間終了後も引き続き、論文投稿のため執筆を行っている。また本研究では、消費者の時間圧力の知覚に「時間制約(期間限定)」以外にも「値引き」が影響を与えることが明らかになった。このことから時間制約との交互作用で、消費者の時間圧力に影響を与えそうな要因について探っていくことが今後の課題として考えられる。
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