研究課題/領域番号 |
19K13830
|
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
宮本 文幸 桜美林大学, ビジネスマネジメント学群, 准教授 (80826933)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 商品パッケージ / 消費者心理 / イメージ・モチーフ / 新カテゴリー創造 / 商品開発 / 口コミ |
研究実績の概要 |
商品パッケージを通じて消費者の潜在意識に働きかけるイメージ・モチーフについて、①メカニズム要因の解明、②イメージ・モチーフの化粧品以外の商品カテゴリーへの応用可能性検証、③海外への適用可能性、の3点を解明するため3回の実験等を実施。①②の解明は概ね達成出来た一方、③には課題を残した。これらを学会発表(海外1回、国内5回)するとともに、3つの論文にまとめ、うち2つを学会誌に投稿し査読中。また①と関連した「化粧品パッケージに対する消費者の“顔”認識」に関する学会発表に対して異文化経営学会賞を2019年5月に受賞した。 具体的研究成果としては「①メカニズム要因」について、ⅰ)カテゴリー遠隔性(商品カテゴリーの典型的な外観イメージからの遠隔性の度合い)、ⅱ)ビジュアル認識容易性(外観デザインの商品属性情報の提示後にイメージ・モチーフを言語化できる度合い)、ⅲ)象徴属性(イメージ・モチーフが象徴する属性区分)、ⅳ)ストーリー説得性(イメージ・モチーフを含んだ商品属性情報によって、商品の魅力度を向上させる度合い)、ⅴ)「形の面白さ」が抽出された。 「②イメージ・モチーフの化粧品以外の商品カテゴリーへの応用可能性」については飲料(ハーブ・ティー)と家電品(ヘアドライヤー)において化粧品と同様のメカニズムが働くことが実証でき、イメージ・モチーフの飲料・家電品カテゴリーへの応用可能性が示された。 「③海外への適用可能性」については日本人を対象にした化粧品(美容液)の実験を同じ年代の中国女性に対して行ったところ、納得感・試用意向・口コミ意向の群間差が出ない、カテゴリー遠隔性の群間差が大きいなど日本人と異なる点が見られた。その要因としては化粧文化の歴史が日本に比べて短いことや文化的価値観の違いなどが推定されることから、今後は市場の形成過程や価値観のトレンドなどを踏まえる必要性があり引き続き研究したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間(2019・2020年度)における研究課題のうち約70%の進捗である。すなわち、①イメージ・モチーフのメカニズム要因の解明、②イメージ・モチーフの化粧品以外の商品カテゴリーへの応用可能性検証、③海外への適用可能性、の3つの研究課題のうち、①②は概ね完了し、③については1回の実験・分析を行って課題抽出が出来た段階である。2020年度は③を中心に可能な限り課題解明に取り組みたいと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
残された研究課題「③海外への適用可能性」については、先の実験結果から、日本人女性と中国人女性の反応の差異を生む主な要因として、ⅰ)化粧品市場の成熟度、ⅱ)文化的要因、の大きく2つあると考えられる。 「化粧品市場の成熟度」としては中国における化粧品市場のほうが日本よりも歴史が浅いため、日本人が感じる新奇性を中国人は過度に感じる可能性がある。すなわち化粧品の「初心者の中国人」にとっては、変化に対する許容範囲が「熟練者の日本人」よりも狭い可能性がある。一方の「文化的要因」としては、イメージ・モチーフの題材として化粧品に相応しいか否か、という視点で見た場合に、例えば「磁石」をイメージ・モチーフとした場合、日本人は科学的・人工的なものも許容し興味を感じるが、中国人は文化的に自然志向が強いため、これを最初から受け入れがたいと感じるというようなことである。 今後はこれら2つの仮説を軸に、まずは多数のイメージ・モチーフの刺激素材を用意し、日本人と中国人のそれぞれ数名のパネルによる定性調査(FGI)を行い、その傾向を探索的に解明したいと考える。さらに資源(時間・費用)の余裕があれば、ここで抽出した要因をアンケートによる定量調査によって検証し、より精度の高い法則性を見出したいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画どおりの支出を心掛けて推進しましたが、若干の誤差(2,942円=計画した額の0.3%)が発生しました。
|