研究課題/領域番号 |
19K13832
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
田中 智晃 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (50609188)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イノベーション / 楽器 / 自動演奏ピアノ / ヤマハ |
研究実績の概要 |
2020年度に次ぎの論文を発表することができた。 ①"The Parallel Innovation of Musical Instruments: The Development History of Emotionally Engaging Products in Japan" (東京経大学会誌、310号 ) ②「市場の成熟化へ挑む自動演奏ピアノ:ヤマハ・ピアノプレーヤ(ディスクラビア)の開発史」(電子キーボード音楽研究、vol.15) ①の論文では、楽器卸商が必要な理由を楽器産業のイノベーションの構造から論じた。楽器は従来のイノベーション理論で言われているような製品ではなく、破壊的なイノベーションが発生しても、既存製品は必ずしも市場から消えるわけではない。それはユーザーの楽器への保守的な意識による。このように人の感性に訴えかけた製品では、複数の新旧のイノベーションが同時並行に存在することが可能になる。そうすると、同じ楽器のカテゴリーに属しても複数の異なる技術の製品が存在する。このような業界では、小売店は膨大な種類の製品とそのアクセサリーを取り扱う必要が出てくる。数社との取引だけでは店舗を維持することが難しくなり、卸売商の存在が必要になる。楽器業界には専門卸商が多数存在するが、この原因は楽器に内在する以上の特性からである。 ②の論文では、上記論文に関連して、ヤマハの製品開発に注目した。ヤマハでは1981年から自動演奏ピアノを製造・販売し始めた。しかし、録音メカニズムに問題があり、小売の現場では顧客からのクレームで混乱した。その後、初期モデルの設計を一新し、新しい自動演奏ピアノ(ピアノプレーヤMXシリーズ)が、1986年に発売された。これは、光センサーを使用した革新的な製品であり、従来の自動演奏ピアノでは実現できなかった正確な録音・再生を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルスのまん延と緊急事態宣言により、予定していた国内調査、海外での学会発表はほとんど中止になり、雇用していたアルバイトの作業も思うように進まなかった。そのため、2019年度に調査したことを論文にするだけで終わった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスのまん延は当初予想できない事態であり、2020年度の遅れをカバーすることは困難である。今後は、本研究の期間延長を視野に入れて、できる限り研究スピードを上げていく予定である。ただ、2021年度も新型コロナウィルスの終焉は見えず、企業内にある資料を調査することは困難な状況で、インタビュー調査においても思うように進まないことが予想される。また、予定していた国内外での学会発表はオンライン主催のところで行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスのまん延により、助成金を使った研究を思うように行うことができなかった。2021年度は前年度に計画されていた研究を含めて、助成金を計画的に使用する予定でいる。
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