本研究では、ある選択の結果がその後の別の選択場面における消費者心理に及ぼす影響(逐次選択の影響)について分析し、そのような影響が生じる条件と心理的メカニズムの一部を解明した。 逐次選択の影響を分析する際、重要な概念として消費者の目標が挙げられる。選択場面において消費者は、複数の目標を想起する場合があるが、逐次選択研究では、主に、自己制御(例:節約する、計画的に購入する、低カロリーの食品を食べる、等)に関わる目標と、それとはコンフリクトするような快楽性(例:散財する、非計画的に購入する、高カロリーの食品を食べる)を追求する目標の2つを想定して議論を展開している。 本研究においてもこの2つの目標を想定した上で、ある選択によって一方の目標が達成した場合、その後の選択ではもう一方の目標に対応する選択を行う傾向(目標のバランス傾向)、そして、ある選択によって一方の目標が十分に達成しない場合、その後の選択においても同様の目標に対応する選択を行う傾向(目標の強化傾向)の2つのパターンについて、この影響が生じる条件と心理的メカニズムの一部を明らかにした。 具体的には、過去の選択と現在の選択の関連性が高い場合(消費場面が同じ場合)、そして、現在の選択の実施が過去の選択の価値をさらに高めることができる場合には、上記のような逐次選択の影響が生じることを明らかにした。さらに、後者の場合には、過去の選択自体が、現在の選択を正当化する要因となるといった心理的メカニズムについても明らかにした。 最終年度では、これらの研究知見をベースとして、「研究の目的」として設定していた、消費者の購買意思決定に関する新しい包括的モデルの構築に取り組んだ。具体的には、異なる2つの購買意思決定過程を内包するモデルを構築した。
|