研究課題/領域番号 |
19K13836
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
磯田 友里子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (40822200)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間と消費 / 時短 / 時間資源配分 / 消費者行動 / 生活体系アプローチ / 質的研究 |
研究実績の概要 |
本年度は、学会発表1回と論文1篇の出版(オンライン早期公開)を行った。いずれも消費者行動研究を行う上で、時間の役割をどう捉えるべきかを論じたものである。認知革命を受けて、1980年代以降の消費者行動研究では情報処理アプローチが主流となっている。しかし、情報処理アプローチでは時間は消費者がコントロール不可能な外的要因として扱われており、消費者が積極的に配分する資源という側面を捉えられていない。本研究では、消費者行動と時間の関係を読み解くにはよりマクロな視点が重要であることを指摘し、生活体系アプローチの視点を取り入れた分析を提案した。より具体的には、消費者行動を生活行動レベル、消費行動レベル、購買・使用行動レベルに階層化し、それぞれのレベルで時間資源配分の意思決定がどのように行われ、その結果どのように消費者の購買意思決定が多様化しうるかを示した。 6月には12人の女性を対象にオンラインインタビューを行い、日々の生活で時間資源がどのように配分され、その結果どのような状況で異なる製品やサービスが選択されているかを明らかにしようとしている。質的研究の方法に照らしてコーディング等の分析を行っている。分析途中ではあるものの、現在までに「時短」がどのように理解され実践されているかが浮かび上がってきた。 さらに、消費者行動論の教科書執筆プロジェクトにおいて、消費者行動と時間をテーマとした章を担当することになり、顧客の時間資源に注目して商品展開を行う企業に取材を行い、現在原稿の執筆を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響で中止していたインタビュー調査を、調査方法を再検討することで再開できた。具体的には、スノーボールサンプリングから調査会社が持つパネル抽出に切り替え、全面的にオンラインインタビューとした。また、関心領域の近い研究者の協力を得られたことで、今後の分析の内的整合性や理論の頑健性などが向上することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
海外学術誌への投稿を最終的なアウトプットの目標として設定し、現在行っているインタビューデータの解析を続ける。分析や論文執筆途中の段階で国内外の研究者から意見を募り、これらを適宜反映させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビューのテープ起こしを共同研究者が使用するソフトウェアアプリケーションで行ったため外注費用が抑えられたこと、また、質的研究分析用のソフトウェアアップデートを無料で行えたことから次年度使用額が生じた。 これらは2025年度に、英語論文投稿準備のための英文校正や旅費・物品費に充当する予定である。
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