研究課題/領域番号 |
19K13840
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
上元 亘 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (50759595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 規範的行動 / 規範逸脱行動 / 返報性 / サービス・リカバリー |
研究実績の概要 |
当該年度中においては先行研究レビュー及び社会における関心をヒントに、顧客の規範的意識に基づいた規範逸脱行動、つまり日常用語で言うところの「ありがた迷惑」な行為を定性的調査を通じて明らかにしたことが主な実績である。 先行研究において論じられてきたサービスにおける顧客の社会的行動は、規範意識に基づく規範的行為および規範逸脱的な意識に基づく規範逸脱行為であることが先行研究レビューを進めるうちに暗黙の仮定となっていることが明らかとなったが、規範意識に基づく社会的行動が必ず規範的行為になるか(つまり、企業や店舗、他の顧客に対するポジティブな結果となるか)、反対に規範逸脱的な意識に基づく行為が必ず規範逸脱的な行為になるか(つまり、企業や店舗、他の顧客に対するネガティブな結果となるか)は十分な検討・検証が為されていなかった。その一方で、ニュース等の報道では顧客が良かれと思って行ったことが店舗や施設にとって迷惑となってしまう、つまり規範的行動に基づく規範逸脱行動(ありがた迷惑)の存在が示唆されている。 そこで報告者は、サービス従事者と利用者を回答対象とした質問票の自由記述回答をもとに、顧客の規範的行動に基づく規範逸脱行動およびその要因を明らかにすることを試みた。結果からは顧客の店員に対する物品贈与や従業員の業務を代行する行為が、また顧客の要因として日常的な習慣であることや受けたサービスへの返報、自身の失敗へのリカバリーといったものが明らかとなった。 調査を通じて得られた結果を、令和2年3月に開催される予定であった国際学会において発表する予定であったが新型コロナウイルスの影響で学会が中止となり今に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題において報告者は主に定性的調査を行うことを検討し、複数の調査会社や協力可能な企業と検討を重ねたものの20~50名に及ぶ複数の被験者に対しデプス・インタビューを実施するにあたって予算の制約や企業や業種の偏りといった問題を抱えており研究内容の見直しを迫られることとなった。 また、企業と顧客との規範的意識の違いについて、先行研究をもとに従来論じられてこなかった研究領域を顕在化させ、より先行研究からの研究潮流に適合するように研究を位置付けることとした。そのため先行研究レビューに予定よりも長い時間を要した。結果的に調査が終了したのは3月であり年度内に成果として論文を刊行できず、発表予定の学会も新型コロナウイルスの影響により中止となってしまった。 しかしながら、新たな理論的知見のみならずサービス・マーケティング研究における新たな研究視角・研究課題を提示することができたため、進捗の遅れはそれほど大きな問題であるとは考えていない。また、今後の研究の進展によっては予定していた成果をあげることも十分可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
サービスの場における顧客の規範的・規範逸脱的行動を明らかにすることに変わりはないが、研究を進める中でサービスの場における顧客の規範逸脱行動に関するインタビュー調査を経て定量的調査を行うプロセスの実施が難しいことが分かったこと、そして予定していた規範逸脱行動の改善トリガーに関する定量的検証に関する仮説構築は社会心理学や行動経済学の知見を援用することが妥当であると判断されたことから、今後の研究は以下の2つのアプローチから複線的に進めることを検討している。 1つめは、顧客の規範的意識と規範的行動との乖離について学際的な先行研究レビュー、そして定性的調査を通じた更なる検討である。特に、顧客の規範的意識に基づく規範逸脱行動をサービス業種や従業員の個人特性といった企業側の観点及び顧客の属性や知識、心理的状態といった顧客側の観点双方から探る。 2つめは、社会心理学や行動経済学の先行研究を援用し、報告者の過去の研究によって明らかとなった、規範逸脱行動の改善トリガーの状況依存性を企業・他の顧客・顧客自身の3つの観点から明らかにする。
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