本研究は,製品やサービスの物質的・金銭的価値ではなく,その使用や保有といった経験が有する価値である経験価値を評価するための尺度を構築し,その有効性に関して検討を行うことを目的として実施された。その際,価値の高い経験を,個人にとって重要な意味をもつ自伝的記憶として対象化し,心理学における記憶研究の手法を応用した。研究の結果,経験価値の高さは「満足」,「ギフト」,「アイデンティティ」,「審美性」,「親密性」の5つで構成されることが示唆された。また,これらの因子で構成される経験価値尺度の得点は,複数の関連する尺度と概ね仮説通りの相関関係がみられたため,基準関連妥当性が高いことが確認された。
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