研究課題/領域番号 |
19K13848
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
河内山 拓磨 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (70733301)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経営者能力 / 経営者予想 / 財務政策 / コーポレートガバナンス / 取締役会構成 |
研究実績の概要 |
研究初年度となる令和元年度では,当初の研究計画調書にもとづき大きく3つのことを実施した。第1に,関連する先行研究の渉猟および整理である。本研究の目的は,経営者能力の測定およびその影響を多面的に検討することにあるが,近年,経営者や経営陣の特性に注目した研究は諸外国を中心に大きく発展してきている。そこで,学術的貢献を担保するためにも関連する先行研究を幅広く収集し,新規性が高いと考えられる研究課題を整理・導出することに努めた。 第2に,英文ワーキングペーパーの執筆および学術誌への投稿である。上記で導出した研究課題について英文ワーキングペーパーを2本執筆した。ひとつは経営者能力の高低が経営者の業績予想精度に及ぼす影響を検討したものであり,現在は英文査読付き学術誌の修正・再投稿中にある。いまひとつは,経営者能力の高低と配当のシグナリング効果を検証したものであり,現在は英文査読付き学術誌に投稿中である。いずれの論文もまだ査読プロセスにあるため公表論文という成果ではないが,その過程では査読者から有益なコメントを多数もらえるため,研究内容を深化させると同時に英文学術誌での掲載確率を高めるものであると考えている。また,上記のほか,経営陣の特性に注目した研究も実施しており,英文ワーキングペーパーを執筆中にある。 第3に,国内外における学会および研究会での研究報告である。ワーキングペーパーを公表論文としていくにあたっては,国内外の関連する研究者からフィードバックをもらうことが極めて重要であると考えられる。本年度においては海外学会へ2回,国内学会へ2回参加し,計4回の研究報告を実施した。いずれも経営者の特性に関連するものであり,本研究課題の質や拡がりを検討するうえで有益なコメントを多数もらうことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は,おおむね順調である。当初の研究計画調書では令和元年度に関連する先行研究の収集と整理,および,経営者能力の測定手法やその影響に関する研究の実施の2つを主に予定していたが,どちらも滞りなく進展している。先に述べたように,先行研究の収集と整理については経営者や経営陣の特性に注目する研究を幅広く収集・整理することに成功している。また,経営者能力の測定手法に関する研究については査読審査の関係上,本研究課題の開始以前に英文査読付き学術誌に掲載されることができた(本研究課題の応募時点で投稿中であったもの)。くわえて,経営者能力がもたらす影響に関する研究については,本年度中にワーキングペーパーを2本執筆・修正し,現在は海外有数の査読付き学術誌へ投稿中にある。査読プロセスの関係上,まだ公表論文には至っていないものの,研究進捗および論文執筆という意味においては当初の研究計画調書で予定したとおりに進展している。 一方で,研究計画調書で予定していた経営者能力の国際比較分析については,国際企業データベースの利用可能性の問題から実施が困難になる可能性があると考えている。具体的には,利用予定であったデータベースの購入が予算上困難である可能性が判明し,本研究課題における研究計画案を一部修正する必要性が生じている。この意味において研究進捗に一部支障が生じている可能性があるが,これは研究課題全体に影響を及ぼすものではない。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度以降の研究活動として,以下の3つを実施することを考えている。第1に,現在,投稿中にある英文ワーキングペーパーの修正である。査読プロセスにおいては,編集長や査読者からコメントや改善要望を多数もらうため,これに適切に応えていく必要がある。こうしたプロセスはワーキングペーパーを公表論文という成果に結びつけていくうえで最も重要な段階であることから,十分な時間と資源をもって臨む予定である。 第2に,当初の研究計画調書にしたがい,経営者能力がもたらす影響,および,経営者能力の決定要因について検討していく。前者については,財務政策の効率性に注目し,経営者能力の高低が投資や配当の効率性にどのような影響を及ぼすかについて検討していく予定であり,すでにパイロット分析を実施しはじめている。また,後者について当初は国際比較研究を実施予定にあったが,上記の理由から分析内容の軌道修正を検討し,日本企業に限定したうえでガバナンス構造が経営者能力にどのような影響を及ぼすかなどに注目する予定にある。 最後に,学会や研究会への参加である。研究アイデアや研究論文の質を高めるためには,他の研究者との交流が重要になる。学術誌へ投稿する前に研究会やワークショップに積極的に参加し研究報告をすることで,当該研究が抱えている問題や欠点を事前に明確化することができる。国内外を問わず,研究報告時間およびフィードバックが十分にもらえる機会を探索し,研究内容の改善に努めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画調書では,初年度である本年度にデスクトップパソコンおよび統計解析ソフトを購入する予定にあったが,国際企業データベースなどの購入を優先した結果,パソコン等の購入に十分な予算が残らなかった。そのため,初年度に予算をすべて使い切ることはせず,これを繰り越し翌年度分の請求額が補充され次第,研究設備を整備する予定にある。
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