研究課題/領域番号 |
19K13860
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
本川 勝啓 学習院大学, 経済学部, 教授 (90780122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非財務情報 / 統合報告 / サステイナビリティ報告 / マテリアリティ |
研究実績の概要 |
企業会計に関しては、令和2年度に財務報告と非財務情報開示における「マテリアリティ」概念の現状と課題を考察し、令和3年度はその考察に基づいて日本企業及びドイツ企業の非財務情報開示の実態調査を実施した。現状では、パイロットテストの位置づけで日経225やドイツのDAX・MDAX・SDAXに含まれる企業の直近年度を対象に、規模・産業・法域などを考慮しながらデータ収集・仮説構築を行い、テキストデータの分析につなげていく準備を整えている。具体的には、①どのような基準やガイドラインに基づいて非財務情報開示を行っているのか、②依拠する基準やガイドラインによって「マテリアリティ」概念に違いはあるか、③「マテリアリティ」概念の違いが開示項目・内容に影響を与えるかという問いをたて構造的なデータ収集を実施し、データ分析に着手している段階である。また、実態調査に監査法人やその他企業による保証業務の動向も組み入れ、開示内容との関連性についても考察を実施している。 公会計に関しては、地方公共団体における非財務の成果情報と発生主義会計情報が予算の意思決定に与える影響を明らかにし,査読付き学術論文として国際的なジャーナルに掲載された。本論文では,予算に厳しい制約がある状況下では,高い又は低い非財務の成果情報と発生主義に基づくコスト情報の両方が利用され,予算意思決定に影響を与えるという証拠が新たに示されている。なお、当該研究は横浜市立大学の黒木淳氏と共同で取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非財務情報開示の実態調査を実施する中で、日本企業の非財務情報開示実務における横並び行動を認識するにいたった。このため、非財務情報の開示行動を分析するにあたり、比較的産業構造が類似するが依拠する開示制度が異なるドイツ企業との比較を試みることにした。当初計画から分析対象を広げたことにより、データ分析の段階までは実施できていないが、研究課題に対するより適切な分析を進めるという観点ではおおむね順調に進展していると考えられる。 公会計に関しては、上記の通り国際的なジャーナルに成果物を公表するという意味では一段落したので、新たに外部報告に関する研究課題を設定するためにアイディアを練っている。
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今後の研究の推進方策 |
日本企業とドイツ企業の比較研究を実施する上で、会計や情報開示に関する制度の違いを分析に組み込むことを予定している。また、国際的に非財務情報開示に関する基準設定を行う動きも欧米を中心に日本でも活発化しており、外部環境の変化についても企業の開示行動に影響を与える要因として注視する必要があると認識している。今後はドイツの研究者との意見交換も重要になってくるため、今年度9月からのサバティカルを利用してドイツの大学にて在外研究を行う計画をたてている。 公会計を対象にした研究については、非財務情報と財務情報の外部報告にも目を向けて先行研究のレビューを実施することを計画している。企業会計とは利害関係者の情報要求や開示主体のインセンティブが異なることが与える影響について特に着目していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は国際的な学会やワークショップが感染症対策のためオンラインでの開催に切り替わり、海外出張を自粛したために支出しなかった旅費などの次年度使用額が発生した。 次年度にはドイツでの在外研究を予定しており、主にヨーロッパ各国で実施される学会やワークショップに参加する際にかかる旅費や登録料に次年度使用額をあてる計画である。
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