研究課題/領域番号 |
19K13862
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 哲弘 中央大学, 商学部, 准教授 (90707085)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際課税 / コーポレート・ガバナンス / ステークホルダー / 利益移転 / 監査報酬 |
研究実績の概要 |
本研究は、企業の地理的な分布と会計情報の関係について分析することを主な目的としている。昨年度までの研究の進捗が非常に良好であり、当初目標とされた企業の地理的な分布の直接的な会計情報(特に利益調整)への影響は分析がおおむね完了した。このため、本年度はさらに研究を進めるために、日本の経済環境を考慮した研究、具体的には、国際課税や企業のコーポレートガバナンスの影響について、詳細に分析を進めた。 まず、国際課税に関して、日本企業が外国に進出する際に課税管轄間の利益移転を行うかどうかについて先行研究を整理し、今後の研究のための準備を行った。ここでは、日本の国際的な事業に対する課税制度について概観したうえで、課税管轄間の利益移転を析出するための実証的な方法について検討し、先行研究の発見事項を整理した。日本企業の利益移転についての研究は未だ発展途上であり、今後実証的な研究を積み上げていく必要があることが確認できた。 次に、地理的分布の分析を進める際に、どうしても問題になるのが、国レベルの商慣行の違いを如何に考慮すべきかという点である。特に、コーポレートガバナンスは、企業の経営戦略等に大きな影響を与える可能性があると同時に、国ごとに異なる特徴を有しており、一般的に日本企業で採用されると考えられるステークホルダー志向のコーポレートガバナンスがどのような特徴を持っているのかを理解することは重要である。そこで、今年度は、ステークホルダー志向のコーポレートガバナンスの下で、日本企業はどのように主たる株主とその他の株主の間に生じうる利害対立を調整するのか、あるいはそれによって会計情報はどのような影響を受けるのかを分析した。その結果、日本企業は株主間の対立を緩和するような経営戦略を実行しており、また会計情報もまた株主構成の影響を受けることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、計画した企業の地理的な分布の直接的な会計情報(特に利益調整)への影響の分析はおおむね完了した。この成果は、昨年度までに掲載された論文としてすでに公表している。このため、本年度は日本企業が地理的に広く分布する(すなわち国外へ進出する)際に問題となる、税制やコーポレートガバナンスについて、研究を拡張した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、日本企業特有のコーポレートガバナンスが会計情報に与える影響について、さらなる分析を進めている。この影響を詳しく理解することで、企業の地理的な分布の影響と、日本企業が持つ特徴の影響の両面から、日本企業の影響を立体的に理解することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのまん延により、出張等を含めて支出計画を見直した。差額は次年度に分析を進めるために必要となるデータベースの購入等に充てる予定である。
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