研究課題
本研究の「問い」は既存の会計研究ではほとんど考慮されていない企業活動の空間、すなわち企業の「地理的な分布」が会計行動に与える影響 を分析することである。従来の会計研究では、資本構成や契約などの企業の性質と会計行動について分析されてきた。しかし、実際に企業が行 動している「空間」には「輸送コスト」や「制度的な差異」等の企業活動を阻害するコストが存在する。このようなコストが存在する場合には 、情報伝達や物・人の輸送に追加的なコストが生じるため、企業行動が変化しうる。そこで本研究では、企業の空間的な広がりを子会社の所在地情報からプログラムを用いて特定・数値化することにより、また、企業の地域的な特徴、文化的な特徴を考慮することによって、これらの研究の欠落を埋める研究を行っている。本研究の初期の段階では企業の地理的な分布と利益調整との関係、租税負担削減行動との関係について分析した。次に、日本企業を取り巻く環境、特に労働市場や株主以外のステークホルダーによる影響を考慮して、日本企業のコーポレート・ガバナンスの特徴を分析した。最後に、日本企業の経営者や従業員による組織のための行動について分析した。これらの研究成果はすでにいくつかのジャーナルに掲載されている。本研究ではいくつかの重要な発見があった。まず、会計情報は企業の地理的な分布によって歪められる可能性がある。次に、日本企業はステークホルダーを考慮したコーポレート・ガバナンスを実施しており、企業グループ全体で資源の再配分がなされる。最後に、日本のマネジャーは予算目標設定をプレッシャーに感じており、予算目標設定は組織のために行われる非倫理的行動につながる可能性がある。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The British Accounting Review
巻: In Press ページ: 101218~101218
10.1016/j.bar.2023.101218