研究課題/領域番号 |
19K13868
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
佐々木 多恵 常葉大学, 経営学部, 助教 (80825729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 業績評価 / 評価指標 / モチベーション / 高等研究機関 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究者の動機づけに対する、さまざまな業績評価指標の影響を明らかにすることである。文献研究、定量的および定性的な調査を通じて、具体的にどのような指標をどのように利用すれば、研究者を含む専門職の動機づけの向上に有効なのかを示そうとするものである。本研究の問題意識として、研究活動は客観的な業績になるまでに長期を要し、任期付き雇用の研究者も多いというわが国の現状が挙げられる。 研究期間の初年度となる2019年度の研究実施計画は、管理会計と心理学の分野を中心とする文献研究を行い、依拠する理論とフレームワークを確定させることであった。心理学については、Deci and Ryan (1985) のIntrinsic Motivation and Self-determination in Human Behaviorを基本的な文献に定め、動機づけのタイプを内発的/外発的に分類するアプローチを採用することとした。また、管理会計領域では主に業績評価に関する先行研究レビューを進めてきた。 本研究課題に関連する学術論文として「組織特性と予算利用形態の関係」(常葉大学経営学部紀要第7巻第1号,11-17頁)を執筆した。また、論文「高等教育・研究機関における業績評価指標と資金配分の現状と課題」が『国民経済雑誌』2020年7月号において発表予定である。当該論文は、国立大学法人に対する運営費交付金の重点支援評価に関するデータを利用し、高等教育・研究機関における業績評価指標(KPI)の設定傾向、指標の精選と進捗状況に関する評価結果の傾向、および予算配分との関係を分析したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究は当初の目的に沿って進めることができている。この文献研究の成果の一部を、文部科学省の公表データ「令和元年度国立大学法人運営費交付金の重点支援の評価結果について」を用いた分析と組み合わせ、2020年2月に学術論文「高等教育・研究機関における業績評価指標と資金配分の現状と課題」(『国民経済雑誌』2020年7月号掲載予定)を執筆ならびに投稿した。関連分野の学会にも積極的に参加することができた。 その一方で、当初2019年度の計画に含めていた、本研究が依拠するフレームワークの構築は完了しておらず、複数の研究者へのプレインタビューは質問項目が定まっていないため実施に至っていない。計画よりも遅れている点については、2020年度に優先的に取り組む課題としていく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、主な研究方法として質問票調査を採用する予定である。質問票調査の質を高めるために、2020年度にはまず、当初2019年度に予定していたプレインタビューを可及的速やかに進める。最終的な調査対象には本研究が焦点を当てる雇用形態のほか、勤務する組織や専門分野にも一定程度の多様性を持たせるため、プレインタビューもその目的と整合するように計画・実施する。質問票の構築過程では、専門分野の学会や研究会への参加、それらにおける発表等を通じて、関連する分野の研究者や実務家の意見も十分に反映させながら、入念に事前準備を行う。 文献研究については、比較的蓄積が豊富な、海外の先行研究を中心として今後も継続し、フレームワークを確立させる。また、2020年9月に参加予定であった国際学会については翌年以降への延期が決まったため、2020年度は国内の学会・研究会に参加し、最新の研究動向を把握することにも努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、統計分析用のソフトウェアの購入を見送ったため、当初予定額よりも支出額が小さくなった。旅費についても同様に、インタビュー調査が実施できなかったため、当初予定額よりも支出額が小さくなった。これらはいずれも、次年度(2020年度)に購入・調査実施によって使用予定である。 翌年度分として請求した助成金は、当初より2020年度に予定していたインタビュー調査とその後の打ち合わせのために要する旅費、デスクトップパソコンの購入代金、和文献・洋文献の購入代金に充当予定である。
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