研究課題/領域番号 |
19K13868
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
佐々木 多恵 常葉大学, 経営学部, 助教 (80825729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 業績評価 / KPI / 動機づけ / 教育研究組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究者の雇用形態に着目した上で、多様な業績評価指標が動機づけに与える影響を明らかにすることである。2021年度は、査読付き国内論文「教育研究組織の業績評価における課題と可能性―国立大学法人のKPI分析に基づく考察―」(『公共経営とアカウンタビリティ』第2巻第1号,1-15頁)を発表した。当該論文は、日本の国立大学法人が中期目標期間を通じて設定している重要業績評価指標(KPI)のタイプや数、評価結果の傾向を、大学類型(国際志向・全国志向・地域志向)ごとに統計手法を用いて分析したものである。その結果、国際志向の大学ではより多くのKPIが設定されている傾向があること、大学類型によってKPIに対する進捗状況の評価結果に差があること、および今後の業績評価における質的評価と主観的評価の重要性が明らかとなった。このことから、所属組織の違いによって動機づけに対する評価指標の影響が異なる可能性も見出され、仮説の精緻化を進めている。 また、3回の学会発表をおこなった。第1に「教育研究活動の業績管理:国立大学法人のKPI分析に基づく考察」(2021年8月、国内学会)であり、前述の査読付き国内論文はこの発表に基づいて執筆されたものである。第2に「研究機関における業績管理システムと動機づけの関係―文献レビューによる検討―」(2021年9月、国内学会)であり、本研究課題の1つの軸となる動機づけに関する文献研究結果の一部を当該発表で報告した。第3に”Key performance indicators and fund allocation in Japanese national university corporations: Current status and issues”(2021年9月、国際学会)であり、これは2020年9月に開催予定であった学会が延期されたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」において既述のとおり、業績評価指標とその性質や評価結果の傾向に関しては、公表データを用いた統計的分析を実施し、それらを学会報告や論文等の成果として発表する段階まで研究を進めることができた。 しかし、研究課題のキーワードとなる「動機づけ」および「雇用形態」については、文献等資料による調査にとどまっており、現時点では自ら収集したデータを用いた検証ができていない。このことから依然として当初の構想に対する結論の見通しは立てられていないため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、文献研究に基づいた仮説の設定、インタビュー調査と質問票調査によるデータ収集、ならびに教育研究組織における雇用形態と業績評価に関する研究成果のまとめと発信にすみやかに取り組む。 なお、研究方法として、当初計画では文献研究ののちにインタビューと質問票調査のみ実施する方向であったが、新型コロナウイルスの蔓延により実地調査に支障が出ていることから予定通りの規模での調査が難しくなる可能性がある。これを補うため、公表データを用いた分析も加えて研究推進を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。第1に、当初現地開催が予定されていたイギリスでの国際学会がオンラインでの実施となり、そのための旅費が使われなかったことで、大幅な経費削減となった。第2に、2021年度までに実施予定であったインタビュー調査や質問票調査が未実施であるため、それにかかる経費が未使用であることが挙げられる。 今後は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、実地調査、最新の文献等資料の購入、学会参加、英語論文の投稿およびそれにかかる英文校正サービスの利用を中心に、経費を使用していくことを計画している。
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