本研究の目的は,プロジェクトのコストマネジメントシステムを開発するための基礎的研究を行うことである。プロジェクトの代表例として,新製品や新システムの開発プロジェクトがあげられる。プロジェクトの成否が企業の命運へと繋がることも多いことから,研究の意義があるものと思われる。この目的を達成するために,本年度は主に二つの活動に取り組んだ。第一に,前年度に取り組んだ予備費さらにはプロジェクトのリスクマネジメント研究に対するテキストマイニング分析の結果を論文化し、『中京経営研究』に投稿した。論文では、適切な予備費の計上に向けて、プロジェクトのリスク要因やリスクマネジメントの成功・失敗要因等について考察している。第二に,ウォーターフォール型プロジェクトとアジャイル型プロジェクトの分類に着目しながら、コストマネジメントシステムの診断的利用と双方向利用の使い分け,コストマネジメントシステムと信条システムもしくは事業倫理境界システムとの補完関係等に関する事例研究に取り組んだ。ウォーターフォール型とはプロジェクトの各フェーズ(設計、製造、テストなど)を原則的に後戻りせず滝のように進める方式、アジャイル型とはプロジェクトの各フェーズが全て含まれた一定の短期間を反復的に繰り返しながら細かく成果を出していく方式を意味している。事例研究は、国内大手保険業の情報システム開発部門へのインタビュー調査に基づくものであり、研究成果の一部は国際P2M学会2022年度秋季研究発表大会および国際戦略経営研究学会2022年度年次全国大会で発表するとともに、論文を『国際P2M学会誌』に投稿している。
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