本研究が試みるのは、学際的アプローチから、日韓のポピュラー音楽をめぐる学術的問いと社会的問い両方に対して答えを出すことである。それは、下記の二つの主な目的を果たすためである。 ①東アジア地域の歴史からポピュラー音楽のグローバルな歴史を書き換えることを試みること。ポピュラー音楽における中心―周辺モデルを超えたグローバルな生産・流通・消費のメカニズムとその中の新たな集団的アイデンティティを、これまで世界ポピュラー音楽の周辺として位置付けられてきた東アジア地域から明らかにすることを目指す。②「日韓」をめぐる二国間的認識とまなざしのフレームを、世界文化史的な観点に転換させること。これまでの批評空間において単純な「比較」の対象として語られてきた日韓のポピュラー音楽空間を、重層的な水準における「相互作用」との側面から歴史的かつ実証的検討することで、国家間の次元を超えたグローバルな次元における共通の文化実践とその効果を明らかにすることを目指す。 2022年度は、その目的を果たすために次のような研究活動を行った。 ①資料収集:1990-2010年代における日韓のポピュラー音楽の形成過程に関する資料集取、文献検討、理論的考察を行った。②単著の執筆を行なった。③研究発表:日韓のポピュラー音楽の変容過程と相互作用、その産物に関する研究発表(国際シンポジウム発表、招待講演、研究会発表)と国際的共同研究を行った。④社会的発信:J-POPとK-POPの比較と相互作用に関するテレビ、新聞、雑誌の寄稿、コメント、インタビューなどを行なった。
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