研究課題/領域番号 |
19K13877
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 沙織 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員 (00828999)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ジェネティック・シティズンシップ / 遺伝学的市民権 / 患者の研究参画 / ELSI |
研究実績の概要 |
一年度目は、患者の研究参画の実相について、参与観察とin-depthインタビューを用いた調査を中心に研究を遂行した。具体的には、日本国内の患者組織から対象グループを(1)研究参画を実施している組織、(2)研究参画を実施していない組織、これらの2つに分類し、それぞれ調査対象の選定を行った。(1)と(2)の患者組織に対面での半構造化インタビューや、グループフォーカスインタビューを実施した。また、(3)疾患の研究を行っている医師・研究者及び、(4)製薬企業の担当者に対する調査について、日本国内の患者参画の事例調査を行って対象選定の検討を行った。 上記の作業から、研究参画のステークホルダーを対象とした質的調査をある程度進める事ができた。次年度は、本年度に構築した対象ネットワークや事例研究に基づいて、更にデータ収集を進める。
また、国際比較研究の基礎データ作成の一環として、ジェネティック・シティズンシップと研究参画に関するアメリカ、欧州の先行研究や事例、報告書や論文を収集し、データベースの構築を行った。1980年代以降の研究参画の事例に関する文献調査も並行して実施した。作業を通じて、患者を中心とする研究(Patient-Centered Research) や患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)、患者参画(Patient Invoilement)など、研究参画に関する政策概念は多岐に渡る事が明らかになった。それぞれの地域での概念や歴史、科学政策としての財政や構造について整理する事が次年度以降に必要となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の研究組織を構成するステークホルダーに対する質的調査は、患者組織に対しては対象の選定とインタビュー調査を実施し、研究者と製薬企業についてはフィージビリティースタディを実施した。次年度も調査を継続する事で、ある程度質的分析をまとめて学会報告して論文かする予定である。 データベースについては、遺伝学的市民権をめぐる諸概念や諸外国における研究参画の事例について、一定以上のデータを収集する事ができた。 研究計画に一年度目として予定していた作業は概ね完了し、全体としては順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に実施した質的調査を更に進展させる。 患者組織、研究者、製薬企業を対象とするインタビュー調査を継続して、それぞれN=10程度のデータ収集を見込んでいる。また、患者組織と研究者に対して、日本の患者の研究参画について意識調査をパラレルに実施する。 また、国際比較や政策分析の基礎データ収集を継続し、患者が主体的に運用に関わるバイオバンクやレジストリの事例について、資料調査とインタビュー調査を行う。新型コロナウイルス の影響で当初予定していたアメリカでの現地調査は延期する可能性があるが、その場合は代替策としてオンライン会議を使用する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より年度末期の人件費が掛からなかったため、残額を次年度に使用する事とした。
|