研究課題/領域番号 |
19K13881
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
稲津 秀樹 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10707516)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多文化社会 / 破局的状況 / 排除・差別 / 批判的想像力 / 共生の思考 / 当事者研究 |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、年度途中から休暇を取得した関係もあり、実質半年間ほどの成果が中心となる。限られた時間ということもあり、この期間は、本研究課題に即した追加リサーチとアウトプットを進めることが中心となった。追加リサーチでいえば、コロナ禍の影響が変化し、調査課題の現場である、神戸をはじめとする関西圏のフィールドに赴き、参与観察のみならず、直接の聞き取りが本格的に再開できたことは、本研究において大きな進捗となった。 アウトプットでいえば、本研究の理論的支柱となる多文化社会の批判的想像力に関する翻訳書(共訳)の刊行がなされ、これに関連したオンライン国際シンポジウムの開催、および、研究代表者自身も登壇・報告したことが挙げられる。また、昨年行ったシンポジウムの内容が一部論文として発表されるなど、研究課題に関連した他のアウトプットができたことも本年度の成果である。具体的な実績としては、次の通りである。 ・『オルター・ポリティクスー批判的人類学とラディカルな想像力』(ガッサン・ハージ著、塩原良和・川端浩平・前川真裕子・稲津秀樹・高橋進之介訳、明石書店、2022)。 ・「地域学研究大会第11回大会報告:地域課題と知のクロス-『地域の当事者とは誰か-当事者研究と地域学』」『地域学論集』19(1)1-50(向谷地生良・山根耕平・笹渕乃梨・植田俊幸・田中大介・稲津秀樹・菰田レエ也・呉永鎬・西浦勝之・丸祐一、鳥取大学地域学部、2022). ・'Searching for Alter-Politics in the Stuckedness of Multiculturalism :A Commentary Letter to Ghassan Hage' 『他者性の否認に抗する共生の思考-ガッサン・ハージ氏特別講演』(慶應義塾大学・明石書店共催・招待講演、2022). 以上が、2022年度の研究実績概要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心的な課題の一つであった翻訳書の刊行と、国際シンポジウムを通じたアウトプットという目標が達成されたことは、たいへん大きな成果であったと判断する。しかし、「おおむね順調」という判断をせざるを得なかったのは、他の研究課題(刊行が遅れている共同研究の成果:神戸の都市モノグラフ報告書ならびに、これまでの個人の研究成果をまとめた単著など)の刊行が遅れているためである。また、本研究課題の申請時には当初に予定のなかった事情から休暇を得ることとなり、その期間中の研究がストップせざるを得なかった点も挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
以上の経緯と事由から、本研究課題には未達成の状態で残した課題があるため、昨年度中に、2023年度の研究延長申請を出し、これが受理された。よって、持ち越された予算を中心に、神戸の都市モノグラフ報告書の刊行を、延長期間内に達成することを最優先しながら、できる限りのアウトプットに努める次第である。単著については既に出版社が決定していることとあわせて、他にも研究テーマに関連する共著(英語書籍を含)の5冊の出版企画が進行中である。これらの原稿執筆を進めていくことで、今後の研究のアウトプットを確実に進めていく次第である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の報告にて記した事由(突発的な事由による休暇取得)のため、本研究の延長申請を申請し、これが受理されたため、神戸の都市モノグラフ報告書の作成・印刷費用のみ、次年度(2023年度)に持ち越す形となった。使用計画としては、2023年度中に懸案の報告書を発刊することによって、本課題に応えたい。
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