研究課題/領域番号 |
19K13884
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
柴田 徹平 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (10806061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラットフォーム企業 / ネットワーク効果 / 経営戦略 / 個人請負就労者 / シェアリングエコノミー / GAFA / 労働者保護政策 / 労働者性 |
研究実績の概要 |
平成31年度は、シェアリングエコノミーの市場動向の把握およびプラットフォーム企業の経営戦略の解明することを目的に研究を進めた。そのために第一に、日本のシェアリングエコノミーの状況とプラットフォーム企業の経営戦略の理論仮設を先行研究により明らかにした。第二に、プラットフォーム企業の経営戦略の理論仮説の検証を業界団体のA社、フリーランス仲介業のB社、プラットフォーム企業のC社へのインタビュー調査によって行った。 シェアリングエコノミーの国内の市場規模は、売上高ベースでは2021年に1071億円と推計されているが、その特性上、定量的に把握できない部分もあるため、実際はこれより大きいと考えられる。例えば、米国のGAFAなどのプラットフォーム企業の時価総額の合計は2018年10月末で200兆円を超えていることから市場の潜在力の大きさが見て取れる。 プラットフォーム企業のビジネスモデルは、自社のプラットフォームの利用者を増やすことによって、ネットワーク効果を高め、それによって企業価値を高めることである。加えて、プラットフォーム企業のビジネスモデルは、交換型とメーカー型があり、交換型が利用者の仲介・つながりを基本とするため、この仲介・つながりがいかにスムーズにできるかが戦略上重要となる。これに対して、メーカー型は、利用者と生産者に分かれ、生産者が作成するコンテンツを利用者が消費するという関係になる。この場合は、いかに生産者が魅力的なコンテンツを作れる環境を作れるかが戦略上重要となる。 A社は、交換型であり、利用者と運転者を円滑にマッチングすることで、企業価値を高めてきた。A社の戦略は①運転者の確保、②円滑なマッチングシステム、③利用者・運転者のトラブル回避のための評価制度の導入、に特徴づけられる。一方で、運転者の労働問題や既存産業の仕事を奪うなど課題も現れていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個人請負就労者の活用は世界的に進んでおり、それは既存の産業においても幅広く見られる一方で、シェアリングエコノミーという新たな産業においても個人請負就労者の活用が進められるようになった。これまで既存産業における個人請負就労者の保護政策は、個人請負就労者の三類型論によって具体的に論じられてきたが、シェアリングエコノミーにおける保護政策の枠組みにこの三類型論が適用できるかは、明らかにされていない。 本研究は、シェアリングエコノミーにおける個人請負就労者の保護政策の枠組みを明らかにすることを目的にしている。そのために平成31年度は、シェアリングエコノミーの市場動向の把握とプラットフォーム企業の経営戦略を明らかにしてきた。その結果、①プラットフォームビジネスモデルは、大別して交換型プラットフォームとメーカー型プラットフォームに分けられること、②交換型とメーカー型で個人請負の働き方が異なる可能性がある事、③A社は交換型に属すること、④交換型、メーカー型問わず、シェアリングエコノミーで就業する個人請負就労者は労働問題に直面している可能性があること、が明らかになった。 以上の点は、当初の研究計画によって明らかにしようとしていた点であり、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、31年度に得られた知見をもとに、論文を執筆する。またプラットフォーム企業の経営戦略の下における個人請負就労者の活用方法と個人請負就労者の働き方に関する理論仮説の解明および3年目に行う個人請負就労者への本調査に向けた予備調査を実施する。そのために4月から8月には、1年目のインタビュー調査を踏まえて、プラットフォーム企業A社における個人請負就労者の活用の形態について三類型論を用いて解明する。9月から3月には、解明した活用形態をもとに、3年目に個人請負就労者へ行うインタビュー調査の調査票を作成する。また調査票作成の過程では、予備調査を実施し、調査票のブラッシュアップを行う。4月以降、外出自粛要請の下で、調査が進められない事が見込まれるため、文献研究など外出自粛要請下でできることを優先的に行い、研究の進捗が遅れないように意識的に取り組んでいく。
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