研究課題/領域番号 |
19K13884
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
柴田 徹平 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (10806061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラットフォームエコノミー / 労働者保護 / フリーランス / アルゴリズム / 労働問題 |
研究実績の概要 |
2021年度は、盛岡と東京においてフードデリバリープラットフォームで働くフリーランス20人に本調査を実施した。本調査の目的は、どのようなフリーランスを労働者保護の適用対象とすべきかということであった。調査では労働者性の判断基準に基づき、労働者性の有無を明らかにした。明らかになったことは、形式的には、諾否の自由があり拘束性もないので、指揮監督下の労働とは言えない状況であったが、実質的には、フリーランスが生活費を稼ぐために仕事を断る事も自分で自由な時間に働くこともできない状況であった。また報酬の単価は、プラットフォームが決定しており、その水準も時間換算で労働者と同水準であり、報酬の労務対償性があるといえる状況であった。 以上の事を踏まえれば、日本の労働者性の判断基準では、使用従属性が重視されている事から、プラットフォームエコノミーにおけるフリーランスは労働者性が否定される可能性が高い。しかしながら、彼・彼女らは、報酬単価の決定権限がない中で、生活費を稼ぐため、長時間就労をしており、様々な就労上の問題を抱えている。こうした状況を鑑みた時に、アルゴリズムにより管理されたフリーランスに適切な保護が届くためには、労働者性の判断基準において使用従属性を重視するのではなく、報酬の労務対償性を重視することが必要であることが明らかになった。 また調査の過程で、競合相手の多さが報酬水準に影響を与えることが明らかになった。加えて報酬水準は量的調査によって把握することが適切であることも明らかになった。2022年度はこの点を追加調査によって補っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オンライン調査の実施体制を確立したことで、計画通りに本調査を実施することができた。一方で、本調査を実施する中で、プラットフォームエコノミーにおけるフリーランスは、競合相手の多さが報酬水準に影響を与えることが明らかになった。加えて報酬水準は量的調査によって把握することが適切であることも明らかになった。よってこの2点を追加調査として実施していく必要があるため、その追加調査の分だけ、進捗状況が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、2つの追加調査を行うことで、本研究の目的を達成する。この2つの調査については、調査対象者の確保と量的調査について調査票の作成と予算の確保の見通しをすでに立てており、この計画の下で進めていく。 また今年度は、研究成果を学会で2回報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本調査の実施の際の旅費を計上していたが、コロナ渦のため出張が困難となり、その分の旅費が残額として余った。これが一つ目の理由である。一方で、本調査の実施の結果、追加調査の必要ができてきた。具体的には、量的調査(業者への委託調査)と聞き取り調査(20ケース)である。量的調査の実施には、委託費用がかかるため、その分の予算を確保するため、支出を必要最低限としてできる限り抑えた。残額はその結果として発生した。これが2つ目の理由である。 以上の事を踏まえて、残額は、量的調査の委託調査費用、聞き取り調査の謝金として執行していく計画である。
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