個人請負就労者の活用は先進諸国を中心に世界的に拡大している。これまで個人請負就労者(雇われない働き方)の研究では①低所得、不安定就労の実態がある、②一方でどのような個人請負就労者に労働者保護を適用するのかといった統一した基準(理論)がない状況であった。本研究では、シェアリングエコノミーという新たな産業の領域における個人請負就労者の保護政策の枠組みを応募者が考えた三類型の理論を用いて、明らかにした。本研究では、Covid19の感染拡大下での研究実施となったため、研究計画の一部修正が必要になったものの、盛岡と東京の2地域におけるフードデリバリーサービス配達員へのヒヤリングおよびフードデリバリー配達員へのアンケート調査を実施することで、本研究の目的を達成した。 明らかになったことは、以下のとおりである。三類型論とは、個人請負就労者を独立自営型、労務下請型、常用型の三つに区分し、労務下請型は、労働基準法上の労働者とは必ずしも言えないが一部労働法の適用をすべき存在である事、常用型は偽装請負に当たるので、労働法を適用すべき存在である事、というものである。以上の三類型をフードデリバリー配達員に当てはめてみると、フードデリバリー配達員は、アルゴリズムによる管理の内実次第では、常用型(偽装請負)になる可能性がある事が明らかになった。しかしながら、アルゴリズムは公開されていないため、適切な保護を及ぼすためには、アルゴリズムの公開またはアルゴリズムが配達員に対して、どのような管理統制を行っているかの調査研究を進めることが重要である。またアルゴリズムによる管理の実態が明らかにされていない現状でも、フードデリバリー配達員は、労務下請型であることは間違いがないので、就業条件に関する何らかの最低基準がないと、不安定就労に陥る可能性が高い存在であることも明らかになった。
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