研究課題/領域番号 |
19K13887
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
加藤 林太郎 国際医療福祉大学, 留学生別科, 助教 (00803355)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 会話分析 / 相互行為分析 / 医療面接 / 接触場面 |
研究実績の概要 |
本研究では、母語を異にする医師-患者間で行われる医療面接における相互行為を、会話分析の手法で観察、分析することで、参与者が感じる「言葉の壁」の向こう側でいったいどのようなトラブルが起き、どのような対処が行われているのか、また、参与者がどのような方法やリソースを用いて共通の目的を達成しようとしているのかについて明らかにする。 本年度は、前年度までに収集した、中国語を母語とする模擬患者と日本語を母語とする医師との相互行為の分析を進めた。マルチモーダル分析で用いられるELANを用い、音声のみならず、視線、ジェスチャーなども含めて微視的に研究する中で、本年度は特に「日本語、中国語の共通要素である漢字をリソースとして用いた修復連鎖の様相」に着目した。さらに、これまで日本語母語話者と中国語母語話者の相互行為における有用な言語的資源であると言われてきた漢字が、実際にどのように参与者に位置付けられ、どのような相互行為上の資源として利用しているのかを考察した。 その結果、日本語母語話者と中国語母語話者の模擬医療面接において、漢字は参与者間の主要なカテゴリー対や制度的場面からの逸脱を助ける資源として、修復連鎖の遂行に貢献していることが分かった。その成果は、2021年日本語教育学会秋季大会において口頭発表した。本発表により、今後研究を深め、論文化に結び付けるための指摘や助言を多く得ることができた。また、本研究のテーマに関連したデータセッションを定期的に開催しており、そこで知識、分析能力の向上に努めるとともに、今後は本研究のデータについてもさらに分析を深めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid19の影響で、新たな模擬医療面接データの収集が事実上不可能となってしまった。しかし、現有のデータについて集中して分析することで、より微視的かつ精緻な研究に移行している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度を迎えるにあたり、本年度はこれまでの分析を論文化することを最大の目標として進めたい。また、データをさらに深く検討することで新たな課題も発見されており、それについても学会発表もしくは論文化を進めたい。新たなデータ収集はCovid19の影響下では難しいこともあり、現有のデータについての分析を精緻化することにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響により、各種学会がオンラインに変更されたことで旅費の支出がなかったこと、また、模擬医療面接の開催が不可能だったことにより謝金等の支出がなかったことが最大の原因。ソフトウェア、ハードウェアへの予算および学会費等への支出に充当する予定。
|