本研究の目的は、生産性と効率性に偏重する新自由主義的政策の裏側で、人口減少に歯止めがかからず生活環境の悪化と生活機能の低下に直面し、住み続ける権利を侵害、ないし脅かされている過疎地域において、過疎地域再生のための要件、並びに方法論と政策のあり方を示し、持続可能な地域循環型福祉経済の構築を図ることで政府によって侵害されてきた過疎地域に「住み続ける権利」を回復することにある。中でも、社会的弱者、就労困難層と言われ、より同権利を侵害ないし脅かされかねない障害者に焦点化し、障害者の就労の場としての就労継続支援A型事業所、とりわけセーフティネットの機能を果たすべく、法的に税制優遇措置を受けている社会福祉法人が運営する事業所を対象として事例研究を進めてきた。 2022年度は、2021年度に整理した過疎地域再生を目指す地域循環型福祉経済の概念モデルについて、同概念における「地域住民」の位置付けについて整理、検討を行った。編著書における出版企画において原稿を執筆したが、企画の遅れにより2023年度に出版を予定している。 そのほか、事例研究を重ねる中で共通して浮かび上がってきた研究課題として農福連携の取り組みがある。そこで過疎地域再生における方策の一つとして農福連携の取り組みの有用性へと視点を移していくこととした。なかでも、農福連携を進めていくうえで古くて新しい問題であるトイレ問題に焦点化し、二次データを用いながら論点の整理、また農福連携におけるトイレ問題を解決するための方策について分析、考察を行った。
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