研究課題/領域番号 |
19K13904
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
白戸 健一郎 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80737015)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メディア / 政治 / 昭和 / 世論 |
研究実績の概要 |
2020年度は、東京朝日新聞社で政論家として活躍し、後に衆議院議員となった中野正剛に関する資料収集と政治とメディアに関する先行研究の整理を主として行った。雄弁家として知られた中野正剛は多数の演説会を開催し、それをもとにした著作やパンフレット、論説が多い。特に、パンフレットは数ヶ月の短期間で100版近くを重版するほどの拡散ぶりであるが、このようなエフェメラルなメディアはこれまでのメディア史研究においてはさほどなされてこなかった。演説会は演説会を運営する人々と集う聴衆の組織化をはかるイベントして、政治運動を進める上で極めて重要な機能を果たすことが予想できる。また、パンフレットは、演説会に参加したものはその記憶を呼び起こすものとして、演説会に参加できなかったものはその熱気を伝達するものとして大きな意味をもつと予測することができる。中野正剛の演説会とパンフレットの関係性を考察することは、研究史上の空白を埋めるだけでなく、政治運動の組織化と世論形成という面においても大きな意味をもつと考える。 また、政治とメディアに関する先行研究の整理の一環として、大野哲哉『通信の世紀』の書評論文を『メディア史研究』に投稿し掲載された。さらに、明治後期に広く読まれた『万朝報』の創刊者であり、政治への関心も強かった黒岩涙香の評伝、奥武則『黒岩涙香ー断じて利の為に非ざるなり』に関する書評論文を投稿し、2021年4月に『京都メディア史研究年報』に掲載された。2020年度は資料収集と先行研究の整理をおこなったので、2021年度はこれらの蓄積をもとにして、研究成果を公表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナ禍もあり十分な資料収集ができなかった。また、育児休業を取得したため、研究を遂行できる時間に限りがあった。そのため、思うような研究成果をあげることができなかった。できる範囲でやれるものとして、中野正剛の資料収集や先行研究の整理としての書評論文を手がけた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度以降は中野正剛と活字メディアや演説会、またメディア界における中野正剛の位置づけを規定する研究を進める。特に、中野正剛の演説会と活字メディアとの関係を中心に調査していく。同時に、中野正剛における「民権」概念や、彼の思想形成における彼の出身地である福岡県という風土や世代、早稲田大学という学歴などの性質を念頭において、研究していきたい。
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