研究課題/領域番号 |
19K13907
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 将貴 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (90807835)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 介護提供主体 / 家族介護 / 格差 / 因果推論 / 機械学習 / 就業 / 大規模社会調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、超高齢社会における持続可能な介護供給体制はいかにして可能かという問いを念頭に、家族介護者・介護労働者・介護組織という様々な介護供給主体の実態・問題・解決策を探求することであった。本年度は、家族介護に着目した論文を2本、介護データを分析する際に多用するパネルデータの分析手法に着目した論文を1本執筆した。以下に分析結果を簡単に示す。 1) 調査対象者のうち、父親が健在なのは約67%、母親が健在なのは約85%であった。また、約70%が「1時間未満」の場所に父母の住まいがある。父母ともに約6.5%が介護が必要な状況にあり、父母の介護が必要な対象者のうち、約80%が父母ともに要支援または要介護認定を受けている。平均的な介護時間でみた場合には、主な介護提供者は非家族(介護事業者)である。父母の介護が必要な対象者のうち、いずれの「サービスも利用していない」と回答したのは父親で30%、母親で25%であった。 2) 本研究では、日本を代表する高齢者パネルデータを用いたイベントスタディデザインの手法を用いて、家族介護が健康アウトカムに及ぼす負の効果が長期にわたって持続することを明らかにした。また、家族介護の健康への影響は、誰に介護をするかによって異なることもわかった。さらに、女性と男性の介護者では、健康への影響が異なることも明らかとなった。 3) 1)と2)の分析手法として、パネルデータを用いた固定効果モデルの長期的な因果効果に関心がある際の識別仮定について整理した。また、固定効果モデルは個体内の変動に着目するため、パラメター推定値の解釈についても他の分析モデルとは異なる点が多い。この他にも、個体内変動のみに着目することで生じる統計的検定力の低下や、ターゲット母集団の変更の可能性など、固定効果モデルを扱う上での注意点についてレビューした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、ディスカッションペーパーを含めると、介護提供主体である家族介護者・介護労働者・介護組織の全てについて、データの整備が完了し、かつ分析を進めている。研究課題2年目はデータ整備と分析に時間を費やす予定であったため、分析を進めている現況は、おおむね順調に進展があると言える。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、現段階で分析を終えている分析について、査読付き英文雑誌に投稿をする。現段階で、投稿を予定している論文は6本あるため、今後の優先すべきタスクは引き続きこの作業になる。第2に、予算に余裕がある場合には、既存調査で尋ねていない介護項目について尋ねるべく、インターネット調査等の実施を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により、旅費として計上していた予算が執行できなかったため次年度使用額が生じた。
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