研究課題/領域番号 |
19K13909
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
田中 志敬 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (80612407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 都心回帰 / コミュニティ形成 / キーパーソン / マンション / まちづくり |
研究実績の概要 |
今年度も昨年度に引き続きコロナ禍の長期化・深刻化に伴うリスク回避から面接調査は極力自粛し、既存の記録(事前の参与観察データと地元の広報誌等)等のドキュメント分析の精密化を主軸に研究をすすめた。その上で地区をM地区、対象者を調査協力の許諾を得られたM地区の当時のまちづくりリーダーに限定して一部面接調査を実施した。それらの調査で得られたデータを分析し、M地区の地域共生の取組みを、マンション-地域共生の5段階モデル(①「無視」段階、②「存在の顕在化」段階、③「対応の形成」段階、④「相互依存」段階、⑥「自立化」段階)と、まちづくりの3段階モデル(①「初動期」、②「実践期」③「成熟期」)を用いて活動展開の整理をおこなった。 これらの事例研究で得られた知見として、活動展開の分析では、ホスト社会内の機運醸成や合意形成に多くのコストを割いていることが明らかになった。またキーパーソンの分析においても、マンション居住者との関係構築面は「相互依存」及び「実践期」の段階以降は安定化していることが確認できた。一方で、ホスト社会内でのキーパーソンの役割は、役員任期の長期化や新旧及び各種リーダ間の意見対立が顕在化する等、安定化を経て不安定化したことが明らかになった。ただし、今回の M地区のケースでは、不安定化の発現がマンション側のキーパーソンが育った段階であり、地域共生の方針がホスト社会で共有化済みで、ホスト社会側のキーパーソンも複数存在していため、組織や活動自体の不安定化には繋がらなかった。つまりタイミングとバックアップ体制次第で不安定化のリスク軽減や回避ができる点も抽出できた。 なおこれらの成果については論文を執筆・投稿済みで、2022年度に論文掲載及び学会報告が予定されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度から現在まで、研究フィールドの京都市及び関西においてコロナ禍が長期化している。そのため研究対象者への感染のリスク回避の観点及び比較的コロナ感染が少ない勤務地への配慮から、まちづくりの担い手及び支援者層へのヒアリングを控えざる得ない状況が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒアリング調査の実施の可能性については、コロナワクチンの普及状況に左右されるため、現時点では的確に判断できない。そのため昨年度同様に基本的には既存の記録(事前の参与観察データと地元の広報誌等)のドキュメント分析の細密化を研究の中心に据える方針は変更しない。その上で、高齢者の4回目のワクチン接種状況をコロナ状況の改善に応じて、可能な限りヒアリング調査を進めていき、研究課題の解明につながる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による面接調査の縮小及び遅延による謝金及び旅費の縮小、また学会等での成果報告がオンライン形式になったことによる旅費等の縮小により次年度使用額が生じた。次年度はコロナ禍の状況を見つつ面接調査を再開するほか、ドキュメント分析等の代替調査にかかる費用として使用する。
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