今年度もコロナ禍リスク回避から面接調査は極力縮小し、昨年度同様に地区をM地区、対象者を調査協力の許諾を得られたM地区のまちづくりリーダー層に限定して、追加の面接調査を実施した。それらの調査で得られたデータを分析し、M地区の地域共生の取組みを、マンション-地域共生の5段階モデル(①「無視」段階、②「存在の顕在化」段階、③「対応の形成」段階、④「相互依存」段階、⑥「自立化」段階)と、まちづくりの3段階モデル(①「初動期」、②「実践期」③「成熟期」)を用いて活動展開の整理をおこなった。 これらの事例研究で得られた知見として、活動展開の分析では、ホスト社会内の機運醸成や合意形成に多くのコストを割いていることが明らかになった。またキーパーソンの分析においても、マンション居住者との関係構築面は「相互依存」及び「実践期」の段階以降は安定化していることが確認できた。一方で、ホスト社会内でのキーパーソンの役割は、役員任期の長期化や新旧及び各種リーダ間の意見対立が顕在化する等、安定化を経て不安定化したことが明らかになった。 ただし、今回の M地区のケースでは、不安定化の発現がマンション側のキーパーソンが育った段階であり、地域共生の方針がホスト社会で共有化済みで、ホスト社会側のキーパーソンも複数存在していため、組織や活動自体の不安定化には繋がらなかった。つまりタイミングとバックアップ体制次第で不安定化のリスク軽減や回避ができる点も抽出できた。加えて、まちづくりリーダーと上部団体リーダーの関係性は、志向的親和性、属性的親和性、経験的親和性のいずれかでズレが生じた場合に、他の親和性でズレの解消を試みていることが明らかになった。 なお。これらの成果については、2022年度にマンション学会に投稿および学会報告した上で、新たな事例と知見を加えた研究成果を、2023年度の地域社会学会で学会報告を行った。
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