最終年度にあたる今年度は、おもに2つの課題に取り組んだ。 ひとつめは、収集したブログのテキストを質的に分析することである。これまでの研究期間ではおもに内容分析の立場からテキストを量的に分析することを行ってきたが、今年度は病の体験を患者がどのように意味づけているのか、とくに病名告知や回復の見込みがない予後不良の告知のあとにどのように人生を意味づけなおしているのかということに着目して、ライフストーリー分析の立場から、SCATなど質的分析法を用いた分析をおこなった。両者の分析の結果からは、たとえば医療者とのコミュニケーションへの言及など、共通して見いだせるものもあればそれぞれの方法でしか見いだされなかったものもある。 ふたつめは、「書かれた私」としてのテキスト分析とインタビューデータである「語られた私」との違いを分析することである。「書かれた私」は患者と不特定多数の読者(その多くはブログ著者と同じがん患者)とのコミュニケーションであると考えられるが、「語られた私」は患者や元患者とインタビュアーとのコミュニケーションである。このコミュニケーションのあり方の違いが、書く/語る内容の違いを生んでいる。 以上の2つの課題から、終末期を生きる患者たちの生の意味づけを包括的に理解するためには、量的な分析と質的な分析を組み合わせた混合研究法を用いること、そして「書かれた私」「語られた私」の両方のデータを用いることが適切であると思われる。
|